コラム  国際交流  2025.12.02

マクロ経済は停滞持続、来年も成長率は緩やかな低下傾向|中国経済情勢/ヒアリング

~中国市場での成功のカギは研究開発センターの設立と活用にあり~

<北京・上海・広州・シンガポール出張報告(2025年10月19日~11月4日)>

中国

<主なポイント>

  • 国家統計局が10月20日に発表した25年3Q(7~9月期)の実質GDP成長率は前年比+4.8%と、前期(同+5.2%)に比べ若干低下。年初来緩やかな低下傾向が続いている。GDP前期比年率は3Q+4.4%と3四半期連続で4%台にとどまった。
  • 本年5、6月以降、投資、消費とも伸び率が低下傾向に転じ、PMI製造業も4月以降7か月連続で50割れが続いている。
  • 輸出は、米国向けが前期に続いて大幅な減少となったが、東南アジア、欧州向けが高い伸びを示したため、輸出全体では堅調な推移を辿っている。東南アジア向けの伸びが大きかった要因は、米国向け迂回輸出の伸びもあるが、それ以上に、アセアンの内需向け、中国企業の生産拠点向け資本財輸出の増加などが主な要因となっている。
  • 中国の輸出全体に占める米国向けの比率は急速に低下。2018年には19.3%を占めていたが、本年1~9月累計では11.4%にまで低下(同アセアン17.5%、EU15.0%)。
  • 東南アジアにおける中国製品に対する評価は、以前は低価格が主な長所だったが、この数年は品質の高さおよびデザインの良さも重要な長所と評価されている。
  • 投資は、設備稼働率、収益率の低下傾向に歯止めがかからず、製造業設備投資の伸び率鈍化傾向が持続。不動産開発投資とインフラ建設投資も停滞している。
  • 消費は、可処分所得の低下傾向が続いている状況下、足許は買い替え奨励策の効果も息切れしつつあり、伸びが鈍化している。
  • 先行きについては、上記の投資、消費のマイナス要因が好転する目処が立っていないため、来年も経済成長率の緩やかな低下傾向が続く見通し。
  • 4Qの実質GDP成長率が4.4%に達すれば通年で5.0%を実現できるが、それは微妙とみられている。来年の成長率は4.0~4.5%の間との見方が一般的である。
  • 第十五次5か年計画案については目新しい政策方針は見当たらない。米国に依存しない体制構築のための供給サイドの強化およびセーフティネットの拡充に重点。
  • 政府関係者は高い成長率の実現を無理に目指そうとしていないように見える。それでも2035年までに一人当たりGDPが中程度の発達国家の水準に達する目標は保持している。
  • 本年を境に日本企業の対中投資姿勢の潮目が積極方向に変わりつつある中、中国市場での成功のカギは研究開発センターの設立と活用にあるとの認識が広がっている。

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