コラム  国際交流  2025.10.31

トランプ・ショック下の米欧中関係の悪化|日米中関係/ヒアリング

~予測不能な米中関係が続く中、米欧間、中欧間の溝はさらに深まる~

<2025年9月7日~27日 米国欧州出張報告>

米州 中国経済

<主なポイント>

  • 第2次トランプ政権の特徴は次の3点。①不確実性、②予測不能性、③非整合性。
  • 米国内の民主主義政治の根幹である三権分立において、行政府に対する議会、裁判所によるチェック・アンド・バランスが機能不全に陥っている。
  • トランプ政権は米国における政治リーダーに対する信頼の前提である公正、良識に基づく規範を破壊し、自分に逆らうものは悪と決めつけているとの批判が多い。
  • 恣意的な政策措置、法律を無視した政策、政府機関を利用した私的蓄財等、正常時の米国であれば実施不可能な違法行為がトランプ政権の様々な分野で横行している。
  • 中間選挙に備えてトランプ政権は選挙区割りを共和党に有利なように操作。
  • トランプ政権の政策運営が米国経済に与える負の影響が徐々に表面化。
  • トランプ政権は米国製造業の復活をスローガンに掲げている。しかし、高率関税、労働力不足等の影響で日独韓の主要製造企業にとって米国内での生産コストが高くなり、採算がとれずに投資を断念するため、製造業復活は不可能との見方が支配的。
  • エコノミストは経済政策運営以上に、国家システムの動揺の方を強く懸念。
  • 対中政策面では10月末の米中首脳会談の実現に向けて、米国政府側が台湾に対する政策面で中国政府に対する配慮を示している。しかし、経済面ではエンティティリスト政策の強化、米国の港に寄港する中国船舶に対する寄港料引き上げなど、それと整合的ではない施策が実施されている。
  • 中国側はトランプ政権に対して、貿易交渉面において譲歩の姿勢を示さない強気の外交姿勢を示している。
  • ビザ発給規制の強化等を背景に米国主要大学における中国人留学生は顕著に減少。
  • 欧州の専門家・有識者のトランプ政権に対する見方は以下のとおり。①トランプ政権は民主主義を破壊、価値観の共有は不可能、②トランプ政権の政策は不確実、非整合、③欧州全体として米国に対する不信感の方が中国に対する不信感より強い。
  • 欧州の中国に対する姿勢は本年入り後さらに厳しさを増しており、中国は経済面で重要なパートナーであるとの見方が後退し、対中依存リスクを懸念する見方が拡大。
  • こうした欧州の中国に対する見方の背景には、中国がウクライナ問題に関する欧州の人々の受け止め方を過小評価していることにある。欧州から見て経済・軍事両面で中国がロシアを支援していることは明らかながら、中国はロシアを支持していないと主張し続けている。その無神経な態度が中国に対する不信感と憤りを招いている。

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