東京都公式HPより
東京都が水素燃料電池タクシー600台の導入目標(2030年度)を掲げた。補助金も手当されるという。
燃料電池商用モビリティをはじめとした「水素を使う」アクションを加速させるプロジェクト発表会及びFCタクシー出発式
だがこれは都民の財布に重くのしかかることを数字で示そう(数値の出典はリンクを参照)。
まず車両価格だが、想定される燃料電池タクシーはトヨタの「クラウン(FCEV)」で830万円である(注:Fuel Cell Electric Vehicle FCEVは燃料電池自動車の意味)。その一方で、標準的なトヨタのプロパンガスハイブリッドタクシーである「JPN TAXI(和)」は345万5100円に過ぎない。燃料電池タクシーの車両価格は、484万5000円も高いことになる。
燃料費も不利だ。クラウンFCEVの燃費は約148km/kgで、都内の水素販売価格は税込みで1,760〜2,200円/kgである。本稿では中間値1,980円/kgで試算すると、1kmあたりの燃料費は13.38円となる。
一方で、JPN TAXIの燃費は16.5km/Lであり、プロパンガスの価格は直近で税別101円/L(=税込約111円/L)程度なので、1kmあたり6.73円である。そうすると、燃料電池タクシーの燃料費は、1キロメートル当たり6.65円も高いことになる。
さて、タクシーの年間走行距離は約9万kmが標準的だ。すると燃料電池の燃料費は、年間で59.9万円も高いことになる。標準的な寿命である6年間の使用を想定すれば、燃料電池タクシーの燃料費総額は359万円も高いことになる。
最後に、車両価格と燃費を合計して、タクシーの寿命全体で計算しよう。
差し引くと、燃料電池タクシー1台あたり、車両費と燃料費の総額で844万円も高くつくことになる。これが600台なので、総額は51億円に達する。
さて東京都は、この差額を補助するとしているが、この原資はもちろん税金である。東京都は、導入費に最大370万円/台(条件により+240万円/台の上乗せ)、さらに燃料費は「プロパンガス相当との差額」を年上限130万円/台で補助する制度を新設した。
上記の実勢差(約59.9万円/年)なら、燃料費差はほぼ丸ごと都の補助対象となる。これが600台で6年間であれば、燃料費補助だけで21.6億円になる。車両費は22.2億円(= 370万円×600台)であるが、上乗せが満額で支給されるならさらに36.6億円が追加されることになる。合計すると、少なくとも43.8億円、車両費の上乗せ補助があれば58.2億円が、都民の税金から賄われることになる。
更に付け足せば、これに国の補助金も重なる。令和7年度(2025年度)の燃料電池自動車への補助金は、クラウンFCEVで136.3万円/台である。これが600台なら8.18億円が国民の税金による負担となって追加されることにある。
さてこの燃料電池自動車であるが、CO2が減るということが補助の理由なのだが、本当にCO2が減るのかも定かではない。
というのは、東京都における現在の充填用水素は副生水素や天然ガス改質由来が中心で、要は、化石燃料を熱分解して出来た水素なので、その製造時には普通の化石燃料と同様にCO2が発生しているのである。これを再生可能エネルギー由来の水素に将来は変えるというのかもしれないが、その場合、その水素の値段は遥かに高くなる。
このように、東京の燃料電池タクシー600台という計画は、都民の税金による負担が44〜58億円、国民の税金よる負担が8億円である一方で、CO2が減るかどうかも定かではない、というものである。
これが本当に、都民の望む政策なのであろうか?