ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2025.09.04
本稿はワーキングペーパーです。
第2次世界大戦期の日本では軍需生産のために大規模な労働力の動員が行われた。青壮年男性を軍と彼らの労働力が必須の戦略産業に集中するため、政府は女性労働力で代替可能な特定の産業を指定して男性の就業を制限した。女性は、「不要不急産業」の男性労働者とともに、主要な労働力の供給源と見なされた。男性労働者の就業制限の程度が産業間で異なっていたことに着目し、この論文では1920年-1970年の産業別パネルデータを用いて、第2次世界大戦が女性の労働参加率に与えた影響を分析した。その結果、男性の就業制限の対象となった産業では、1940年から女性労働者比率が上昇したこと、およびその影響は1970年にも持続したことが明らかになった。さらに個別銀行に関するケース・スタディーから、戦時中、主要銀行では女性行員比率が大幅に上昇したこと、その背景には内部組織・規程の変更等、さまざまな経営努力があったことが示された。こうした組織・制度の変化が戦時期における女性参加率上昇の影響の持続性の一因であったと考えられる。