コラム  国際交流  2025.08.26

成長率は5%台を維持するも、トランプ関税の影響もあって景況感は停滞持続|中国経済情勢/ヒアリング

~内陸部主導型発展への転換とチャンスを生かせない日本企業の課題~

<成都・北京・上海出張報告(2025年7月13日~26日)>

中国

<主なポイント>

  • 25年2Q(4~6月期)の実質GDP成長率は前年比+5.2%と、前期(同+5.4%)に比べ若干低下。成長率に対する寄与度は外需が低下し、内需のうち投資が増加。
  • 4月初旬以降、トランプ政権との関税交渉が本格化し、関税率が乱高下したが、依然未決着。現在も交渉中であるため、先行きは不透明な状況が続いている。
  • 昨秋以降、景況感を示すPMIはやや改善傾向が見られていた。しかし、本年4月以降再び50割れが続いており、景況感が悪化傾向をたどっている
  • 2Qの対米輸出(人民元建て)は前年比-22.9%と大幅に下落したが、アセアン向け、EU向けが伸び率を高め、輸出全体では同+7.6%と前期の+6.9%を上回った。
  • 2Qの投資は、製造業設備投資、インフラ建設投資の伸びが低下し、不動産開発投資はさらにマイナス幅が拡大した。製造業は過当競争が招いた設備過剰等により稼働率が低下したほか、収益率も中期的な低下傾向が続いているため、当面投資の伸び拡大は期待できない状況。
  • 消費は買い替え促進策の効果により引き続き堅調に推移。
  • 不動産市場は昨年10月以降、販売価格に改善の兆しが見られていたが、本年4月以降再び下落基調に転じている。販売額および販売価格については、昨年に比べて下落幅が縮小しているが、新規開発投資に向かう意欲は乏しい状況が続いている。
  • 「内巻」とは、「限られた資源(市場シェアなど)を争って同業者間で『自発的に』競争を行い、その結果として供給過剰が招く価格低下によって誰もが利益を減らすことになる現象」。最近は中国企業の技術力の向上とともに、過当競争によって生じた大量の過剰在庫が輸出に振り向けられ、海外市場に深刻な悪影響を与えている。
  • 経済の先行きは不安が根強く、消費行動における節約志向の基調は変わっていないため、消費行動が大きく変化することは考えにくい。このため、買い換え奨励等の消費促進策の効果が一巡する10~12月期以降の消費意欲の低下が懸念されている。
  • コロナ後の北京、上海等では大型ショッピングセンターや飲食業での消費の停滞が目立つ。一方、武漢、成都等内陸部の主要都市は活力を維持している。これらの主要都市では優良大学の優秀人材を目当てに優良企業が集まり産業集積が拡大。そこに沿海部から人口が流入し、経済が活性化。内陸部主導型の経済発展を牽引している。

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成長率は5%台を維持するも、トランプ関税の影響もあって景況感は停滞持続|中国経済情勢/ヒアリング