メディア掲載  財政・社会保障制度  2025.08.20

大阪万博で税務行政の講演

『税務経理』(時事通信社)第10271号(202585日)に掲載

税・社会保障

2025年718日に大阪・関西万博のハンガリー館で、ハンガリー国税庁主催のセミナーに登壇してきた。自分の人生において、日本開催の万博で講演する機会に恵まれるとは夢に思っていなかった。ハンガリー国税庁に大変感謝している。

セミナーのテーマは、「税務行政のデジタル化とおよび分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)の公共分野における活用」であり、なぜ大阪万博のハンガリー館で、税務行政のデジタル化や分散型台帳技術といった堅苦しい題材が選択されたのか不思議に思う方も多いだろう。その理由は私にもわからない。私は「時代の変化に対応する日本の税務行政の進化と展望」という題目で、以下のように講演した。

日本の国税電子申告は2004年に始まった。開始から20年、今では携帯電話から確定申告ができる。2023年からインボイス(適格請求書)制度も始まった。2024年の電子申告の利用率は、法人税が90%、個人所得税が75%である。現在、1997年から国税庁の職員が利用してきたITシステムも30年ぶりに再構築中で、2026年から新しいシステムになる予定である。このように日本の税務行政のデジタル化は進展している。国税庁の税務調査の効率性も向上しており、申告漏れの発見や追徴課税の件数が過去最高を記録した。

分散型台帳技術はブロックチェーン技術なので、ブロックチェーンにまつわる話もした。ブロックチェーン技術の特徴は、履歴の追跡ができること、改ざんできないこと、データを全員が共有できることで、税務行政と親和性が高い。

ブロックチェーンといえば、暗号資産である。日本では、個人の暗号資産所得の納税については、所得税のその他雑所得に分類される。自己申告に大きく依存しており、申告漏れが課題である。2023年には、535件の実地調査のうち9割の491件が申告漏れで、金額にして126億円にも上った。こうした状況を受け、暗号資産課税を申告分離課税にする動きがある。国際的には、暗号資産が脱税や租税回避の手段となっており、日本は経済協力開発機構(OECD)の枠組みに参加し、他国と情報交換を強化することとした。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、世界中でデータセンターやデバイスなどの電力消費量が増大、暗号資産取引の電力消費量も増えている。今後、日本のデジタル化が進むとエネルギー安全保障が大きな課題になるだろう。