その他  外交・安全保障  2025.07.01

「マレーシア海洋安全保障会議2025」講演について

マレーシア海洋安全保障会議2025(マレーシア 2025年5月21日開催)にて登壇

国際法・海洋

◆兼原研究主幹は、2025年5月21日、「マレーシア海洋安全保障会議2025」に登壇しました。報告内容と報告資料は、以下のとおりです。

日本の海洋政策は多岐にわたるが、その中で、報告論題として、海上自衛隊と海上保安庁の特殊な関係を選らんで説明した。それは、「マレーシア海洋安全保障会議2025」の多くの参加者が、海軍・海上自衛隊の関係者であることを考慮したからである。

日本における海上自衛隊と海上保安庁との関係について、特徴的な点は、海上保安庁は、警察・法執行機関であることを、常に維持しなければならないという点である。それは、武力攻撃への対処や武力紛争において、海上自衛隊と共同するという、極限状況においてすらも、あてはまる。

このことによる最も重要な帰結は、海上保安庁の武器の使用に対する制限である。海上保安庁による武器使用は、警察・法執行機関として必要な限りの武器使用に、厳しく制限される。それは、自衛権行使における武力の行使(use of force)よりも、はるかに程度が低い武器の使用である。海上保安庁は、武力攻撃への対処や武力紛争において、海上自衛隊と共同する場合でも、日本法により、この武器の使用に対する制限に服する。

多くの国では、海上保安庁(coast guard)と海軍(navy)は、武力攻撃への対処や武力紛争において、ときには、海上保安庁を海軍の一部に統合して、両者の共同がはかられている。端的にいえば、そのような状況においては、海上保安庁は、海軍・自衛隊として機能することになる。

そうした実践をもつゆえに、日本における海上自衛隊と海上保安庁との特殊な関係は、諸外国には、理解することが難しいかもしれない。

しかしながら、日本人登壇者として、「マレーシア海上安全保障会議2025」という重要な機会をとらえて、こうした特殊な関係を説明し、理解を求める責務があると考える。なぜならば、それらの諸国は、近海での武力攻撃への対処や武力紛争において、日本と協力する可能性があるからである。

◆関連する兼原研究主幹の論文

“How to Ensure the Safety of the Japan Coast Guard While Maintaining Its Nature as a Police Organ When It Conducts Missions in Collaboration with the Japan Maritime Self-Defense Force under the Control Guidelines,”
Japan Review, Vol. 6, Nov. 2,
https://www.jiia-jic.jp/en/japanreview/pdf/05JapanReview_Vol6_No2_Atsuko%20Kanehara.pdf

Atsuko Kanehara, “Reconsideration of the Distinction between the Use of Arms in Law Enforcement and the Use of Force Prohibited by International Law―With an Analysis of the Inherent Significance of This Issue to Japan,”
https://www.jiia-jic.jp/en/japanreview/pdf/JapanReview_Vol5_02_%20Kanehara.pdf

Atsuko Kanehara, “The Use of Force in Maritime Security and the Use of Arms in Law Enforcement under the Current Wide Understanding of Maritime Security,”
https://www.jiia-jic.jp/en/japanreview/pdf/JapanReview_Vol3_No2_05_Kanehara.pdf

全文を読む

【講演資料(英語)】Japan's Experience on Maritime policy Formulation