コラム  国際交流  2025.05.20

昨秋以降若干の改善傾向ながら、先行きはトランプショックの影響で不透明|中国経済情勢/ヒアリング

~日中関係改善を背景に日本企業の対中ビジネス姿勢もやや積極化~

<大連・北京・上海出張報告(2025年4月13日~26日)>

中国 中国経済

<主なポイント>

  • 25年1Q(1~3月期)の実質GDP成長率は前年比+5.4%と、前期(同+5.4%)と同じ伸び。多くのエコノミストの事前予想(5.2%程度)との対比では、ほぼ予想の範囲内ながら若干強かった。成長率に対する寄与度は外需が+2.1%と高水準持続。
  • 昨年後半に続いて外需の寄与度が高く、内需の弱さが目立つ。外需寄与度が大きい原因は米国向けの駆け込み輸出増のほか、内需が弱いため輸入が減少したことも影響。
  • 先行きについては将来に対する自信を回復できない状態が続いているうえ、トランプ関税の悪影響がこれから表面化するため、景気回復を期待する見方は少ない。しかし、24年5~9月の最悪期に比べると、昨秋以降、中央政府が景気対策に注力し始め、不動産市場も一部で下げ止まりの兆しが見られるなど、ほのかに明るい材料も出てきている。先行きの見通しは不透明ながら、最悪期は脱しつつあると見られている。
  • 24年9月下旬以降の金融財政両面からの景気刺激策、不動産対策の実施を背景に、不動産市場は24年10月以降、1~2級都市を中心に若干ながら改善の兆し。一部の楽観的な見方では、1~2級都市の不動産価格は年末頃までに下げ止まるとの見方もあるが、多くのエコノミストは下げ止まりの時期は早くても26年以降と見ている。このため、不動産開発投資は当面改善の兆しが見られない見通し。
  • 北京、上海等沿海部主要都市は不動産価格の下落に伴うマイナス資産効果が大きく、子育て中のファミリー層等が物価の安い内陸部に移転したこともあって、消費の停滞が目立っている。内陸部主要都市では消費促進策もあって、沿海部に比べ高い伸び。
  • 中国の輸出全体に占める米国向けの比率は、18年の19.2%から24年の14.7%に低下。対米輸出が半減しても、輸出に与える影響は7%程度の減少にとどまる。
  • トランプ政権下の米国や経済停滞に苦しむ欧州に比べれば、中国の方が安定している。米国の民主主義体制が混乱している状況を見ると、中国の政治・社会制度もそれほど悪くはないと思う人が増えている。以上のような見方の広がりを背景に、中国政府の政策運営に対する不満の声も昨年に比べて弱まっているように感じられる。
  • 日中関係改善のおかげで、年明け後、日本企業では部課長級の出張者が顕著に増加している。ある大手企業では、本社経営陣が米国の混乱を見て、中国の政治経済の相対的な安定性を評価。以前に比べ組織内での中国ビジネスへの逆風が弱まっている由。

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昨秋以降若干の改善傾向ながら、先行きはトランプショックの影響で不透明|中国経済情勢/ヒアリング