前回の記事で、①EUが実施しようとしている国境炭素税(CBAM)は、世界を敵に回す暴挙で、世界諸国によって潰されることになる、②このCBAMへの対応を理由に日本は排出量取引制度法案を今国会で審議しているが、経済自滅を招くだけなので否決すべだ、と述べた。
EU国境炭素税はBRICSが潰す:国会は排出量取引法案を否決せよ
今回は、CBAMの税率と対象となる国家についての計算結果を紹介する。
EU ETS価格を€80/t-CO₂として、代表的な埋込排出原単位(製品製造時のCO2排出原単位のこと) × EUETS(欧州の排出量取引制度)の排出権価格 ÷ 製品の代表的国際価格として、CBAMの税率を計算したのが表1である(為替は 1€ = US$1.10とした)。
結果は20%から79%と、極めて高い税率になることが分かる。トランプ税率なみといったところか。
表 CBAM対象品目ごとの税率推計値
なお留意点として、
さて、この高い税率の矢面に立つのは日本ではない。EUの輸入量全体を100%として、それに占める輸出国のシェアを、以下で6枚の図に示す。図は順に、鉄鋼、アルミ、セメント、窒素肥料、水素及び希ガス、電力である。
日本のシェアといえば、もっとも多い鉄鋼でも4%であり、中国、韓国、インドなど多くの国に続く11位である。鉄鋼以外の製品については、日本は殆ど輸出していない。EUは、世界を敵に回すことになるので、このCBAMは腰砕けになるだろう。日本へ深刻な悪影響を及ぼすことになるとは、考え難い。