ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2025.05.08
本稿はワーキングペーパーです。
本稿は、Oxford Review of Economic Policyから執筆依頼を受け、まとめた論文である。本論文は4部構成からなる。第一部で示したのは次である。標準的なマクロモデルでは、一時均衡は一意に決まり、マクロ経済は安定的に定常均衡に収束していく。他方で本稿の第一部では、標準的なマクロモデルであるDiamondモデルでも、自然な条件のもとで、複数一時均衡が生じ、この複数一時均衡の存在をグローバルマクロ経済動学に適応すると、様々なタイプのグローバルマクロ経済動学が生じることを示した。例えば、一つのタイプでは、そもそも安定的な定常均衡は存在せず、マクロ経済はある上限と下限の間をどこにも収束することなく変動し続ける。このようなケースが容易に出現することを示した。さらに、別のタイプでは、当初、マクロ経済が安定的な状態であったとしても、マクロ経済全体の生産性の上昇がある閾値を超えると、マクロ経済は内生的に複数一時均衡の領域に突入し、大規模崩壊と長期停滞経路が出現する。その結果、生産性の上昇は、一時的にマクロ経済にブームをもたらすものの、長期的には逆に長期停滞を生み出してしまう可能性があることを明らかにした。第二部では、第一部のモデルに土地を導入した。地価(バブル)とマクロ経済の相互依存を通じて、マクロ経済は一時的に維持不能な経路を走り、地価がある閾値を超えて上昇すると、経済主体の期待が内生的に弱気になり、必ず内生崩壊が生じる。すなわち、ある転換点を超えて地価が上昇すると、地価の内生的な崩壊とマクロ経済の不安定性が同時に生じる。第3部と4部では、土地投機が長期の生産性上昇率、経済成長率に与える影響を分析した。とりわけ、信用拡大に着目し、分析した。信用拡大の観点からすると、長期の生産性上昇率、経済成長率にとって大事なのは総信用量ではなく、どのセクター向けの信用拡大なのかが重要であることを明らかにした。より具体的には、不動産向け融資が増える形で信用拡大が生じる場合には、長期的な生産性上昇率、経済成長率にマイナスとなる。他方で、設備投資向け融資が増える形で信用拡大が生じる場合にはプラスとなる。
ワーキング・ペーパー(25-012E)Growth and Fluctuations Economies with Land Speculation