米国共和党政権は、党の総意として、エネルギードミナンスを掲げている。豊富で安価なエネルギーを供給し、自国は固より、同盟国・友好国の経済を強化し、潜在的な敵対国、特に中国に対する優勢を確立するという考えだ。
エネルギードミナンスとは、単なるエネルギー政策に留まらず、米国の世界戦略の礎となるものだ。米国の安全保障にとって最大の脅威は中国である。トランプ政権で軍事戦略を担当するエルドリッジ・コルビーは、中国の軍事的拡張を拒否する「拒否戦略(Denial Strategy)」を採ること、そのために、日本、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、インドなどと共に「反覇権連合(Anti-Hegemonic Coalition)」を形成することを提唱している。この反覇権連合のエネルギーにおける側面がエネルギードミナンスと位置付けることが出来る。
さて日本はといえば、2050年にCO2排出をゼロにするという極端な脱炭素を最優先に掲げたエネルギー政策を採っている。インド太平洋諸国も、先進諸国からの圧力を受けて、極端な脱炭素を公式な政策目標に掲げてきた。だがこれは、エネルギー価格の高騰などの弊害を招き、また太陽光パネルや電気自動車等の中国製品への依存を増してきた。
筆者が提唱するのは、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)諸国が、この方針を変え、「FOIPのためのエネルギードミナンス」の達成に舵を切ることである。