コラム  国際交流  2025.04.14

トランプ政権が国内外に与える衝撃とそれに対する米欧専門家の見方|日米中関係/ヒアリング

~米国の民主主義体制は破壊されつつあり、世界秩序は大きく動揺~

<2025年2月23日~3月16日 米国欧州出張報告>

米州 欧州・英国

<主なポイント>

  • 外交・国際政治専門家や有識者の多くは、「毎日のように信じがたいことが起きている」、「半年前までこんな世界になるとは誰も思っていなかった」と語った。
  • トランプ政権発足後、米国内では立法・司法・行政三権の間のチェック・アンド・バランスが機能しなくなっており、民主主義体制が破壊されつつある。
  • トランプ政権の主要閣僚に対する外交・国際政治の専門家、有識者等の評価は以下の通り。第1に、大部分の閣僚は所管分野に関する専門性を備えていない(とくに外交・安保)。第2に、トランプ大統領の意向に忠実に従うイエスマンである。
  • 裁判所が憲法違反であると指摘してもそれを無視して政策を遂行しているほか、議会に関してはトランプ大統領の意向に反対する議員に対しては次の選挙で落選させることを盾にとって反対させないようにしている。
  • 2026年秋の中間選挙において、与党共和党が下院で過半数を割るリスクが高まれば、トランプ大統領は、国家非常事態宣言を発表して、中間選挙を実施せずに先送りするという暴挙に出る可能性が指摘されている。その手法は1930年代のヒトラーのやり方を参考にしているのではないかとの指摘が多い。
  • 224日の国連総会決議で「ロシアの即時撤退要請」「ウクライナ領土保全」を求める決議案に日本を含む93カ国が賛成。G7の中で唯一米国だけがこれに反対し、ロシア寄りの姿勢を示した。これは米国政府が戦後一貫してとってきたソ連・ロシア抑制の基本方針を覆すものであるため、米国政府内部および米国の外交・国際政治の専門家等に衝撃が走った。この米国の姿勢はG7諸国の間で深刻な亀裂を生んだ。欧州主要国の有識者は、これで大西洋の同盟関係は終わったとの認識を深めている。
  • 米欧間の亀裂の深まりを背景に、欧州諸国は英仏独を中心に、米国の軍事力に依存しない自主防衛力の構築に向けて防衛予算の大幅拡大に向かっている。
  • フランスのマクロン大統領は35日、フランスの「核の傘」を欧州全体に広げる協議を開始する意向を表明した。ドイツ国内には、ドイツのお金を使ってフランスに核兵器を持たせるより、ドイツ自身が核兵器を保有する方が望ましいとの意見がある。
  • EUでは中国との経済関係強化を意図してCPTPPへのEU加入、およびEU中国包括投資協定の交渉再開の可能性について有力シンクタンク等で検討されている。
  • トランプ政権の閣僚は全員がイエスマンであることから、対中政策はトランプ大統領の意向次第で決まるため、トランプ政権の対中政策は予測不能と見られている。
  • 米欧の専門家、有識者は、現在主要国の中で最も安定しているのは日本だと評価。

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