メディア掲載  グローバルエコノミー  2025.02.19

2025年度予算案への懸念

共同通信より配信(2025年1月下旬)

経済政策

昨年末、令和7年度予算概算の政府案が閣議決定された。一般会計の歳出総額は11554百億円であり、歳入のうち2865百億円が公債によって賄われる予定となっている。一方で既発公債の償還費と公債利子支払いを除いた財政収支、すなわちプライマリー・バランスはほぼ均衡している。これは、日本の財政に関して明るい兆しである。

しかし、楽観できない事情もある。まず、プライマリー・バランスの均衡は、その状態で、名目金利が名目GDP成長率を超えなければ、政府債務残高のGDP比が上昇しないという、財政破綻を避けるためのいわば最低限の条件であり、また今後、日銀の政策変更によって名目金利が上昇する可能性が高い。

第二に政治情勢も楽観を許さない。野党各党は減税、あるいは歳出増加につながる施策を主張している。衆議院で与党が過半数を持たない状況で、これらの要求が少なくとも部分的に予算に反映される可能性がある。

そして第三に予算案の歳出の構成にも懸念がある。主な経費の構成比は、社会保障関係費33.1%、文教及び科学振興費4.8%、国債費24.4%、地方交付税交付金16.5%、防衛関係費7.5%、公共事業関係費5.3%となっている。これを20年前と比較すると、平成17年度当初予算におけるこれら費目の構成比はそれぞれ、24.8%、7.0%、22.4%、17.7%、5.9%、9.2%であった。

文教及び科学振興費は人的資本投資・研究開発投資に、公共事業関係費は物的な社会資本投資に対応する支出であり、将来の経済成長に寄与し、税収増加をもたらす可能性がある。一方、社会保障関係費と防衛関係費はともに経済成長との関係が弱い。すなわち来年度予算案では、投資的支出の比率が下がり、消費的支出の比率が大幅に上昇している。これは、日本の財政が合計の数値が示す以上に厳しいことを示している。