ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2025.02.07

ワーキング・ペーパー(25-003E)Growth Promotion Policies When Taxes Cannot Be Raised

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

経済成長率を高めるにはどのようにすればよいだろうか? 標準的な内生的経済成長理論によれば、経済成長は技術進歩により決定され、技術進歩は研究開発によって実現する。したがって、政府が民間の研究開発に補助金を出したり支援したりすることで経済成長率を高められる、というのが一般的な理解である。しかし、現実には政府には十分な資金がなく、政治的な理由で増税することも不可能なことが多い。このような制約下で経済成長を促進することができるかどうかというのが本研究の問いである。

増税ができないとすると、研究開発への補助金など成長促進政策に必要な財源は、国債発行によって賄うしかない。国債はいずれ償還しなくてはならないが、将来においても政治的に増税することが困難な状況は変わらないであろう。そうすると、償還のために再度国債が発行され、成長促進政策のために発行された国債は永久に繰り延べされることになる。このような状況は維持不可能であると考えられることが多い。

しかし、最近の実証研究によると第二次世界大戦後多くの国で経済成長率(g)が国債の利子率(r)を上回って時期が長いことが示されている。国債を永久に繰り延べすると、元本+利子率はrの率で成長するが、GDPgの率で成長するため、長期的にg>rが成立すれば、国債を永久に繰り延べしても、債務/GDP比率は発散しない。つまり、現在・将来において増税が不可能な状況でも、公債発行により経済成長を促進できる余地がある可能性がある。

本研究の分析によると、家計が十分な貯蓄動機を持ち、かつ研究開発の生産性が一定程度以上高ければ、実際に上記のような政策により長期の経済成長率を向上させることが可能であることが分かった。ただし、実現可能な成長政策の支出規模には上限があり、成長促進には限界がある。また、研究開発の生産性が低く、元々低成長の経済においては、研究開発に補助金を出した場合、短期的には成長率が向上するが、長期的には利子率上昇によるクラウディングアウトの効果が上回り、経済成長率は低下する。このような経済においては、民間の研究開発に補助金をだすよりも、公的な基礎研究に公債発行による資金を投入し、研究開発の生産性を上昇させるほうが長期の経済成長につながることも明らかになった。

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