コラム  国際交流  2024.11.29

7~9月期の回復が予想外に鈍かった背景|中国経済情勢/ヒアリング

~不動産市場停滞、経済の先行きへの不安等を背景に景況感の低迷が持続~

<北京・広州・上海・シンガポール出張報告(2024年10月20日~11月6日)>

中国経済

<主なポイント>

  • 24年3Qの実質GDP成長率は、前年比+4.6%と、前期(同+4.7%)比若干低下。季節調整済み前期比年率は+3.6%と前期(同+2.0%)に比べ改善。前期2Qが地方財政難を背景に大幅に減速していたため、7月時点では3Qの成長率は2Qの伸びを上回ることが予想されていたが、予想外に回復テンポが鈍く2Qの伸びを下回った。

  • 通常中国では景気が悪化すると即座に刺激策が実施される。しかし、7~9月期は前期に引き続き主要経済指標が低下。従来の経済政策運営とは異なる傾向が見られた。

  • 中央政府は様々な景気刺激策を発表したが、その実行は地方政府の責任に委ねていた。しかし、地方政府は深刻な財源難からそれらの政策を実施するだけの財政余力が残っていなかった。公務員給与や政府が購入した物資への代金支払も停滞していた。

  • 不動産価格は大半の都市において価格が下落している。先行きについても、1~2級都市において下げ止まり感が出てくるまでに3~5年程度はかかるとの見方が多い。

  • 3QのGDP成長率に対するコンポーネント別の寄与度を見ると、消費が+1.3%、投資が+1.3%、外需が+2.0%と内需の寄与度が大幅に低下、外需は大きく増大した。

  • 製造業設備投資は、設備稼働率が低めで推移し、収益率も下降傾向が続いていることから、今後伸びが低下していく可能性があると考えられる。インフラ建設投資は地方政府の財源不足を背景に伸び率が低下。不動産開発投資は大幅マイナス持続。

  • 消費については、不動産価格の下落に伴う資産効果がマイナスに働いているほか、経済の先行きに対する不安も根強く、節約志向の強まりから消費性向が低下。

  • 8月以降中国経済の停滞が続いた背景は、習近平政権第3期以降、党の指導を一段と強化した組織改革にあると見られている。組織改革後は、党中央が経済情勢を判断して政策を決定し、国務院は指示された措置を執行するという役割分担に移行した。 国務院が積極的に政策提案を行うことが難しくなったため、7月末に開催された政治局常務会議は足許の経済減速について強い危機感が認識されないまま閉幕した。

  • 8月に入り、三中全会と政治局常務会議という二つの重要会議が終わって一段落したところで党幹部が地方を視察し、財源難に直面する地方財政の厳しい現実に対する認識が深まった。その認識を踏まえてようやく上述のような9月以降発表された具体策が策定された。

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