コラム  国際交流  2024.10.23

米国の経済安全保障政策を巡る米国産業界・同盟国との不協和音|日米中関係/ヒアリング

~米国政府は自国企業の利益を優先、同盟国の企業との公平性は軽視~

<2024年9月8日~28日 米国欧州出張報告>

中国経済

<主なポイント>

  • 米国のエンティティ-リスト規制がファーウェイに適用されてから1年半は厳格に実施された。その後、運用方式が緩和され、取引認可を申請した企業の99%が認可された。その結果、5年余りでファーウェイとの取引額は約3,500億ドルに達した。
  • 米国政府は日本やオランダに対して、中国向けに重要技術の輸出を制限するよう要請していたが、米国内の規制緩和の運用実態については他国に通知していなかった。欧州側から米国に対して政策運営の透明性と運用の公平性の確保を求めたが、その要求に配慮する姿勢は乏しかった由。米国の専門家は米国政府の姿勢を批判している。
  • 米国の産業界は米国政府の対中貿易・投資規制に強く抗議。このため、議会が厳しい規制の法律を可決しても、運用面で規制緩和せざるを得ない状況が続いている。
  • 米国企業は引き続き中国企業向けに積極的に供給を継続しているが、日本企業は慎重で、米国・欧州企業にシェアを奪われていると中国の地方政府の責任者は指摘。
  • 米国の企業も消費者も中国からの輸入品に大きく依存しているため、デカップリング政策による経済安全保障には限界がある。規制対象が狭い範囲に限定されている限りは受け入れることができるが、範囲が拡大すれば、企業も消費者も強く反対する。このため、経済安保政策の実際の運用は対中強硬姿勢ほど強く出られないのが実情。
  • 大統領選挙討論会では民主党候補のハリス副大統領が圧勝したが、その後の支持率には影響せず、激戦州での拮抗が続いている。その主因は党派分裂の深刻化にある。各党支持者は自分の考え方に近いメディア(民主党はフェイスブック、共和党はX)を日常的な情報源としているため、対立する党派の見方は事実認識が間違っていると感じる。これが党派分裂を深刻化させている。
  • 日本製鉄のUSスティール買収に対するバイデン大統領の反対意向表明は政治色が強く、米国の国益に反しているというのが筆者が面談した有識者の一致した見方。
  • 中国製EVの過剰生産問題について、中国政府側は過大な補助金は出していないことを米国政府高官に対して説明した際、高官は「それは知っている」と回答。しかし、帰国後も中国政府の補助金を批判。政治の圧力で真実を語ることができない状況。
  • 8月下旬の中国軍用偵察機による日本の領空侵犯は、日本側の海自の護衛艦による7月上旬の中国の領海侵犯に対する報復であると米国の専門家は見ている。
  • フランス、ドイツでは極右等が台頭する一方、政権与党の支持率が低下し、内政が混乱している。こうした独仏両国リーダーのリーダーシップの低下により、移民問題、ウクライナ戦争等についてEU内の合意形成が難しくなる可能性が指摘されている。

全文を読む

米国の経済安全保障政策を巡る米国産業界・同盟国との不協和音|日米中関係/ヒアリング