資源エネルギー庁の資料「エネルギーを巡る状況について」(2024年5月)に、こんな言説がある。
①今後はデータセンターや半導体製造といった産業が成長するために電力需要が増大する②大手IT企業は再生可能エネを求めている③したがって再エネ投資をしないと日本は国際競争に勝てずデジタル敗戦をする―というものだ。
だが、日本は現状ですら電気代が高いのに、さらに再エネを導入して電気代を上げてしまうのでは、国際競争に勝てるはずがない。データセンターや半導体工場はおろか、どの産業も逃げ出してゆく。
日本はまず、とにかく電気代を安くしなければならない。
そのためには、「原子力の再稼働」「寿命延長」「新増設」が必要だ。それでも間に合わなければ、火力発電の出番である。既存の火力を維持し、さらには新規の火力発電所を建てる。日本政府は「再エネ最優先」を止め、原子力・火力優先に変えるべきだ。
データセンターや半導体工場など、将来の電力需要がどうなるか。これは、なかなか予想がつかない。半導体技術の省エネも見込めるけれども、情報処理量の需要爆発がそれを圧倒するかもしれない。生成AIなど、新しい技術が、これまでになかった形での電力需要を生み出すからだ。
電力需要が急増する場合には、意思決定から運転開始までの時間が短くて済む火力発電所が、ますます重要になる。日本は東日本大震災直後の電力不足を何とか乗り切ったが、これには火力発電所が大活躍した。政府はCO2を理由に火力たたきをするのを止めるべきだ。
政府の言う「デジタル敗戦」をしないためには、何よりもまずは「安価な電力」こそが必要である。それによってデータセンターや半導体工場の立地が進めば、しめたものだ。その結果、予期せぬ急激な電力需要増が起きるとすれば、それに応えられるのは化石燃料による火力発電をおいてほかにはない。
幸か不幸か、過去に再エネを大量導入した結果、いま「再エネ証書」は日本国中に有り余っている。だからこそ、それを安く買って「再エネ100%」を名乗る企業が続出している状態だ。電気料金高騰につながるこれ以上の再エネ大量導入は害毒でしかない。直ちに止めるべきだ。