コラム 国際交流 2024.08.21
~不動産市場停滞、経済の先行き不透明等を背景に景況感は低調のまま~
<北京・武漢・上海出張報告(2024年7月15日~26日)>
<主なポイント>
24年2Qの実質GDP成長率は、前年比+4.7%と、前期(同+5.3%)比低下。季節調整済み前期比年率は1Q+2.8%と前期(同+6.0%)に比べ伸び率が大幅に低下。
中国のマクロ経済全体としては昨年8月以降緩やかな回復傾向を辿っていたが、5月以降再び減速に転じた。その原因は地方財政支出の減少にあると指摘されている。
地方政府は昨年11月の特別国債を原資とする財政援助資金を本年5月前半で使い切り、再び財源難に直面することが予想されていた。このため、中央政府は5月に再度特別国債を発行して地方政府への財政支援の準備をしていた。しかし、地方政府の財源不足の中身は、質の高いインフラ建設に必要な資金ではなく、一般経費の財源不足であるため、それを理由に支援を申請しても中央政府の承認が得られる可能性がないと判断したことから、地方政府は中央政府に申請できず、財源難に陥った。
その結果、地方財政支出が滞り、地方政府消費に深刻な打撃を与え、これが工業生産、サービス業生産、消費財小売等広範な分野にマイナスの影響を与えた。加えて、不動産市場の停滞も続いていることから、固定資産投資の伸びも低下に転じた。
PMI製造業は5月以降再び50割れが続いている。同非製造業も4月以降低下傾向が続いており、大半の中国人は景気回復を感じていないのが実情である。
2Qの実質GDP成長率への寄与度を見ると、消費が+2.2%(前期は+3.9%)、投資が+1.9%(同+0.6%)、外需が+0.6%(同+0.8%)だった。前期に比べて消費の寄与度が大幅に低下した一方、投資と外需が成長率の押し上げに寄与した。外需は米欧向け等の関税引き上げ前の駆け込み輸出増大が影響したと見られている。
24年1Qは過剰在庫を抱えた企業が在庫調整のための減産を余儀なくされ、工業生産を抑制し、工業設備稼働率が低下した。その結果、在庫調整が進み、市場の需給バランスが回復し、2Q入り後に工業設備稼働率、企業収益率ともに改善した。投資の先行きは不動産関連を除き、製造業設備投資、インフラ建設とも堅調推移の見通し。
三中全会の決定については、市場経済化推進に力点を置いた2013年の決定方針をベースに改革開放を推進する姿勢が維持され、多くのエコノミストは安心した。
5月以降に発表された各種施策等が徐々に効果を発揮し、昨年同様8月以降緩やかな回復傾向に転じ、年間目標の5.0%前後の成長率は達成できるとの見方が大勢。