コラム  国際交流  2024.07.12

米国とEUの対中姿勢比較:外交面は協調、経済面では顕著な隔たり|日米中関係/ヒアリング

~米国は中国企業排除、EU主要国は中国企業のEU域内投資を歓迎~

<2024年5月26日~6月14日 米国欧州出張報告>

中国経済

<主なポイント>

  • 米国は中国からの輸入EVに対して100%の関税(81日実施)、EUは最大37.6%の追加関税を課すこと(75日暫定実施)を発表した。
  • EUの欧州委員会が暫定実施に踏み切った中国製EVに対する追加関税引き上げ措置に関して、EU内で意見が分かれている。フランスは賛成、ドイツは反対している。その他の多くの国は現時点で態度を決めかねていると報じられている。
  • 中国で好業績の企業が多いドイツは中国政府が報復措置を決定し、ドイツ企業の中国ビジネスへの悪影響を及ぼすことを強く懸念している。フランスは中国市場で好業績をあげている自国企業が少ないため、報復措置への懸念が小さい。
  • 中国国内ではすでにEVの過剰生産問題に直面し、中国政府は生産を抑制するため、22年末でEVメーカー向け補助金を廃止した。米国EU政府が指摘する中国の補助金支給額が欧米諸国に比べてはるかに大きいということを説明することは難しいというのが中国事情に詳しい欧州の専門家の意見である。今回の制裁措置は、正確な事実に基づく検証を実施することなく、米国やEUの政治判断によって発動されたというのが専門家の見方である。
  • 米国では実質的にはデカップリングを目指す政策が続いている。たとえ、中国企業による米国工場建設等が新規雇用創出や技術開発の面で米国企業に貢献しても、それが中国経済の発展につながる場合には、米国は受け入れないというのが米国政府の基本姿勢である。米国の最重要目標は世界における米国の一極覇権体制の堅持である。
  • 米国政府は対中経済安全保障政策の方針について、small yard, high fenceと表現しているが、最近はその範囲が拡大しつつある。欧州の専門家は米国の経済安保政策はすでにyardではなくparkであると批判している。
  • EUの中国に対する基本姿勢は米国と異なる。中国企業がEUに進出しても、EU諸国の企業との安定的共存、新規雇用創出への貢献が保証される限り、中国企業のEU域内への直接投資を歓迎するというのがEU主要国の一致した基本姿勢である。
  • トランプ政権が誕生すれば、日本に対しても、米国の対中強硬政策へのさらなる同調を強く求めるほか、対米黒字縮小のための関税引き上げ、米軍の防衛費の分担増大等についても厳しく要求すると見られている。
  • 頼清徳新総統が5月20日に就任演説を行った。演説の中で注目された部分は、頼清徳総統の独立への意欲が示されたことだった。その内容はある程度想定の範囲内だったが、頼清徳総統の本音は来年になるまでわからないと指摘されている。

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