目次
1.残る先行き不透明感
2.当面の財政・金融政策の運営方針
3.財政余力の実態
4.金融システムの陰り
5.改革の重点課題
不安定な5%成長
コロナ禍と大手不動産企業の資金繰り破綻をきっかけに2022年に大きく失速した中国経済は、2023年半ばに反転の気配を示し、底割れの危機は脱したようにみえる。同国の国内総生産(GDP)は2023年に実質ベースで前年比5.2%の増加となり、政府目標(5%前後)をクリアした後、2024年第1四半期も同5.3%の成長を遂げた(2024年の政府目標も5%前後)。ただし、需要項目別の動向をみると、総資本形成(投資)と外需(対外貿易)の弱さが目立つ(図1)。
中国共産党指導部と中央政府は、10年以上前から、投資に大きく依存する成長モデルからの脱却を目指しており、消費主導の経済成長は好ましい姿と受け止めている。また、金額ベースで固定資産投資の2割以上を占めると言われる不動産投資の回復に時間がかかることは織り込み済みで、投資の急回復は期待していない模様。とはいえ、経済の急速な落ち込みを回避するためには、投資のある程度の伸びが必要であり、中央政府は地方政府にインフラ建設の着実な推進を呼びかけている。
しかし、2023年から2024年第1四半期にかけて、中部および西部地域の固定資産投資は総じて伸び悩んでいる(2023年および2024年第1四半期の①東部10省・直轄市、②中部6省、③西部12省・直轄市・自治区、④東北3省の固定資産投資前年比伸び率:①4.4→5.7%、②0.3→4.1%、③0.1→1.4%、④-1.8→9.6%)。その主な理由は資金不足であるとみられている。