コラム  国際交流  2024.05.24

マクロ経済指標は緩やかな回復傾向の中、足許は安定的に推移|中国経済情勢/ヒアリング

~不動産市場は依然不透明ながら、わずかに明るい兆しも~

<北京・大連・上海出張報告(2024年4月15日~26日)>

中国経済

<主なポイント>

  • 24年1Qの実質GDP成長率は、前年比+5.3%と、前期(同+5.2%)比小幅上昇。季節調整済み前期比年率は1Q+6.4%と前期(同+4.8%)に比べ伸び率が高まった。
  • 1Qの実質GDP成長率の寄与度を見ると、外需が+0.8%(前期-0.2%)と成長率の押し上げに寄与した。これは前期に政府による強い生産拡大要請を受けて、幅広い業種で過剰在庫が生じ、これが輸出に振り向けられたことによるものと考えられる。
  • 欧米諸国は最近の中国の輸出急増について、中国の生産能力過剰が問題であると批判している。しかし、その原因は企業が生産能力を高めたというより、政府が工場の稼働率を引き上げて生産拡大を要請したことが主因だったように見える。過去の政策運営の経緯から見ても中国政府が過剰生産能力をもつことを容認するような政策運営方針を選択する可能性は低い。
  • 1Qの工業生産は、前期に生じた過剰在庫を削減するために減産を余儀なくされたことから伸びが鈍化した。この間、サービス業、製造業設備投資、消費財小売等の主要経済指標は不動産関連を除き、7月をボトムに概ね緩やかな回復傾向が続いている。
  • しかし、大半の中国人は景気回復を実感していない。その背景としては、第1に、不動産市場の深刻な停滞が長期化していること、第2に、先行きの長期的な経済成長見通しが以前に比べて大きく下方修正されたことなどが影響していると考えられる。
  • 北京と上海の中古住宅販売価格は年明け後、前月比のマイナス幅が徐々に縮小傾向。ある政府機関のエコノミストは、不動産市場の最悪期は昨年4~6月期だったと感じると語った。上海では史上最高値の不動産取引が成立するなど高額物件の好調な販売事例も出現。こうした事実がすぐに不動産市場全体の回復につながっていくという見方はないが、わずかではあるが明るい兆しと受け止められている。
  • 1~3月期の製造業設備投資は、ハイテク産業やインフラ建設関連の投資が高い伸びを示している。インフラ建設投資については、昨年10月以降、特別国債の発行による景気刺激策が相次いで発表された。以上のような要因からいずれも堅調な推移が見込まれる。不動産開発投資は前年同様大幅なマイナスの伸びが続き深刻な状況。
  • 当面4~5%程度の成長率を維持できるのであれば、中国政府は時間をかけて経済の自然治癒を促進する漢方薬型の景気回復策を採用する可能性も考えられる。

全文を読む

マクロ経済指標は緩やかな回復傾向の中、足許は安定的に推移|中国経済情勢/ヒアリング