IEA(国際エネルギー機関)がまたもや愚かな報告書を出した。タイトルは「クリーンエネルギーが経済成長の原動力となっている(Clean energy is boosting economic growth)」である。
https://www.iea.org/commentaries/clean-energy-is-boosting-economic-growth
報告書を見ると、
・2023年の世界GDP成長率の10%をクリーンエネルギーが占めた
としたうえで
・欧州では経済成長の3分の1がクリーンエネルギーによるものだった(図)
として、欧州のクリーンエネルギー政策をやたらと持ち上げている。
だが、ここで何を勘定しているのかというと、
・クリーンエネルギー技術の製造:太陽光発電、風力発電、バッテリー製造のバリューチェーンにおけるクリーンエネルギー製造への投資
・クリーンな発電能力の導入:太陽光発電、風力発電、原子力発電、蓄電池など、クリーンな発電能力の導入と電力ネットワークへの投資
・クリーン機器販売:電気自動車(EV)やヒートポンプの販売
となっている。
つまり、
・再生可能エネルギーなどの導入による電気代高騰に伴う経済への悪影響
・EVの導入による運輸・物流コスト上昇に伴う経済への悪影響
などは入っていない。経済分析というのは、便益と費用と両方見なければ落第なのに、費用の方を見ていない。
それに、GDPが増えたといっても、可処分所得が増えないと意味が無い。ロシアが戦争のおかげで軍事費が増えてGDPが増えていると言っているのと同じような議論に過ぎない。
EUのGDPはかろうじて0.5%成長しているにすぎず、その3分の1がクリーン投資なのだそうだ。だが、そもそもなぜ0.5%しか成長していないかといえば、そのエネルギー政策があまりにまずかったからではないのか?
と言う訳で、IEAは経済分析能力を放棄して、EUなどの好むクリーン政策をひたすら正当化するだけの組織に成り下がってしまった。昔はもっとまともな分析をする組織であり、エネルギー安全保障を真剣に考える機関だったと思うが、残念なことだ。
こんなIEAなら無い方がよい。
IEA解体論は米国の共和党系シンクタンクで盛んに議論されている。「たぶんトランプ」になれば、ただでは済まないのは間違いなかろう。