メディア掲載  エネルギー・環境  2024.04.25

直言!エネルギー基本計画(4)「エネルギー備蓄」「インフラ防衛」にこそ投資が必要だ

台湾からの日本有事に備えよ 中国に狙われる日本のアキレス腱

夕刊フジZAKZAK2024413日)に掲載

エネルギー・環境

中国による「台湾統一」のシナリオとして、軍事演習と臨検(行政機関による船舶への立ち入り検査)によって台湾を海上封鎖し、無血開城を迫るというものがある。台湾にはエネルギー備蓄が少ないので、すぐに陥落しそうだ。

ナンシー・ペロシ米下院議長が昨年8月に台湾を訪問した際、中国は台湾を取り囲むように大規模軍事演習をしたが、あれは海上封鎖の練習だった。今年219日には、台湾が実効支配する金門島周辺を航行中の遊覧船を、中国海警局が臨検した。いずれも絵空事ではなく現実だ。

中国は通常戦力で台湾を圧倒しているので、米軍が介入しない限り、台湾統一は成功する。米軍が介入するとなると、在日米軍基地の利用が必須となり、これは中国の攻撃対象となる。対象は自衛隊基地にも及ぶ。さらに日本の戦意をくじくために、基幹インフラ、特に日本のアキレス腱(けん)であるエネルギー供給は狙われるだろう。

ロシアとウクライナは、互いのエネルギーインフラを破壊している。ウクライナは1250キロもの射程を持つドローンで、はるか北方にあるロシア・サンクトペテルブルクの石油精製工場を破壊した。日本も大陸からのドローンの射程に入っている。イエメンのフーシ派はドローンで貨物船を攻撃し、紅海を封鎖している。日本近海も、いつ敵によって航行が脅かされるだろうか。

中国に、簡単に台湾を統一できると思わせてはいけない。そう思えば、本当に攻撃するからだ。必ずや米軍が介入し、中国は惨敗して、国家的な破局に陥り、習近平政権も中国共産党も消滅すると思わせておかなければならない。

このためには、「台湾有事」に自動的に巻き込まれる日本が、簡単に屈服すると思わせてはいけない。

現状では、官民合わせて200日以上の石油備蓄はあるが、タンクは地上に並んでいて攻撃されれば一たまりもない。石炭は1カ月分、天然ガスは2週間分しかない。エネルギーを十分に備蓄し、発送電設備などエネルギーインフラを存分に建設した上で、防衛力やテロ対策を充実しなければならない。

防衛費をGDP(国内総生産)の2%に増額するために大騒動になったことは記憶に新しい。その一方で、日本政府はグリーントランスフォーメーション(GX)、つまり脱炭素のためにGDP3%の投資を進めるとしているが、これは日本経済を衰退させるだけである。

エネルギー備蓄の強化や、インフラの充実とその防衛にこそ、予算を投じるべきだ。CO2(二酸化炭素)などにかまけている場合ではない。