メディア掲載 エネルギー・環境 2024.04.23
不穏な世界、日本のエネルギー供給途絶リスクに「原子力発電」の最大限活用を
夕刊フジZAKZAK(2024年4月10日)に掲載
現行の「第6次エネルギー基本計画」では、CO2(二酸化炭素)削減の数値目標が金科玉条となっている。「2030年に13年比で46%削減」というものだ。だが、これのせいで、電気料金は上昇し、産業の空洞化が進んで、日本は破滅に向かっている。CO2などではなく、電気料金にこそ数値目標を設定すべきだ。
日本の電気料金はここ10年ほどの間に高騰した。10年には家庭用が1キロワットあたり21円だったものが22年には38円になった。同期間に産業用は14円だったものが28円になった。これを10年の水準、すなわち産業用21円、家庭用14円に戻すことを「第7次エネルギー基本計画(7次エネ基)」の数値目標にすべきだ。
ただし、いま政府がやっている「光熱費への補助金」という付け焼刃ではダメである。目前の光熱費は減るが、結局、その穴埋めは誰かが負担するからだ。
どうすれば根本的に電気料金を下げることができるか。
これは簡単で、これまで価格上昇を招いてきた「愚かな政策」の反対をやればよいだけだ。
その筆頭が「原子力発電の最大限の活用」である。長期的に発電量に占める原子力比率を50%に高めることを7次エネ基の数値目標にすべきだ。
原子力発電は、いったん建設して一定期間運転して建設費を償却してしまえば、燃料であるウランは安いので、停止している原子力発電所を再稼働させれば圧倒的に安い発電方法となる。また、定期的にメンテナンスをしているので技術的には寿命はない。このため、40年ではなく、60年、80年、それ以上の期間にわたって発電を続けることで、極めて安く電気を供給できる。
原子力発電所の再稼働を進め、運転期間を延長することで、電気料金を大幅に下げることができる。もちろん、新設・増設する場合でも、長期にわたって運転することで、最も安価に電気を供給できる。
原子力というと安全を問題にする人が多いが、統計を見ると、発電電力量あたりの死亡率はあらゆる発電方式の中で断然低い。生態系への影響を問題にする人もいるが、実際には、太陽光発電のように巨大な面積を必要とする発電方式よりも、生態系に対してはるかに優しい。
そして、原子力を使用しないことによるリスクこそ重大である。
いま世界は不穏だ。戦争や海上封鎖で化石燃料の輸入が途絶したとしても、原子力発電はいったん燃料が装荷されていれば2、3年は発電を続けることができる。燃料備蓄も容易である。
いざというときに電力を安定供給できる重要な電源として、日本のエネルギー供給途絶リスクに対応するためにこそ、国家の意思として原子力発電を推進すべきである。