メディア掲載 エネルギー・環境 2024.02.20
失笑を買った21年の小泉進次郎氏の発言
夕刊フジZAKZAK(2024年2月15日)に掲載
小泉進次郎環境相(当時)は2021年4月、「46%という数字がおぼろげに浮かんできた」と発言し、失笑を買った。13年比での日本の30年のCO2(二酸化炭素)削減目標のことだ。
政府の第6次エネルギー基本計画(6次エネ基)は、この46%を達成するものとして作成され、再エネの大量導入などが書き込まれた。このせいで、光熱費は高騰し、産業空洞化を招いてきた。
そしていま、この状況がさらに壊滅的に悪化しかねない。
政府は今年、第7次エネルギー基本計画(7次エネ基)の検討に入るが、今度は「35年に60%」という、さらに無謀な数字が書き込まれそうだからだ。
なぜ、60%なのか?
それは13年から直線的に「50年にCO2ゼロ」にするには、その値になるという単細胞極まりない決め方だ。実は46%というのも、13年から直線的に50年にゼロにするには30年にはそうなるというだけのことだった。
どうして、そんなことをしたかと言えば、左翼リベラルに毒されたG7(先進7カ国)諸国、特にジョー・バイデン米政権に追随しただけのことだ。おぼろげに浮かんだのではない。
なぜ、50年にゼロかといえば、それは地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」でそうなったからだ。
さらにパリ協定では25年2月までに35年のCO2目標を各国が提出することとなっている。
いま日本政府は60%という数値目標を提出し、それに合わせたエネルギー基本計画を策定する考えのようだ。
だが、これは破滅的だ。産業と経済に対する死刑宣告に等しい。
現実を見れば、中東の紛争、台湾有事の切迫など、日本を取り巻く地政学状況も深刻である。
7次エネ基においては、CO2ではなく、安全保障と経済を重点とするほかない。化石燃料の安定した調達と利用はその要になる。原子力の最大限活用も重要だ。高コストな再エネ導入は止めて、光熱費を低減する。
7次エネ基には、CO2の総量は書き込むべきではない。米国と同様に、独立した研究機関があれこれ試算すればよい。CO2の総量を書きこむと、パリ協定との整合性を取り60%削減すべし、という圧力が働く。
そして、計画内の数値が部門別の「数値目標」として運用されることになるだろう。化石燃料の調達と利用が著しく阻害され、日本の経済は壊滅し、安全保障も危機にひんする。
連載第1回で書いたように、パリ協定からは離脱するのがベストだ。だが、もしもパリ協定に留まるとしても、国全体のあらまほしき(=理想的な)数値目標を掲げるに留め、部門別の数値は示さず、原子力推進などの施策を列挙しておけば足りる。他国はその程度しかパリ協定に提出していない。
日本を守るために化石燃料は重要だ。エネ基はCO2割り当てと決別すべきだ。