ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2024.01.31
本稿はワーキングペーパーです。
バブルは「過剰なカネが希少な投資機会を追い求めている」状況下で起きやすい。こうした見方は政策担当者だけでなく、市場関係者や投資家の間でも広く共有されている。しかしながら、経済学のロジックをたどってみると、市場に出回る貨幣供給量とバブルの発生に関する正の相関を示すのはそうたやすいことではない。なぜなら、既存のバブル・モデルに従うと、貨幣量の減少を導く緊縮的金融政策は、バブル資産の取引量を増やしてしまうからである。
本論文では、理論モデルを構築して貨幣供給量の増加がバブルを引き起こすメカニズムを解明する。まず、バブルの本質、特に、はじけることが分かっているのになぜバブルが起こるかに関して、取引の売り買いに特化したミドルマンの存在がカギとなること、そして、ホールドアップ問題(タダ同然でバブル財を入手できると考えて(コストをかけて)手持ち資産を確保しようとはしない状態)を乗り切らなければならないことが示される。よって、貨幣均衡上では、貨幣供給量の少ない状態では、ホールドアップ問題によりバブルが起こらないこと、また、バブルが起こるためには、過剰な貨幣が市場に出回っていることをミドルマンが予想していなければならないことが示される。
本論文では更に進んで、中央銀行による口先介入によって共有知識を実現させることの是非や、異なる仲介モードであるプラットフォームではなぜバブルが起こりにくいかなどが議論される。