メディア掲載 グローバルエコノミー 2023.12.27
24年、世界は「幻想」からの脱却に向かう
夕刊フジZAKZAK(2023年12月19日)に掲載
洋上風力発電の入札をめぐり、東京地検特捜部は、自社が有利になるような国会質問をするように依頼した日本風力開発の塚脇正幸社長(当時)と、塚脇氏側から約6000万円もの資金提供などを受けた秋本真利衆院議員=自民党を離党=を贈収賄罪で起訴した。この事件で、再エネにはとんでもない利権が絡んでいることが世に広く知られた。
この利権が、国民経済を蝕(むしば)んでいる。
再エネ賦課金は昨年、総額2.7兆円、一人当たり2万円に上った。3人世帯であれば6万円という巨額である。そして、今年5月にはグリーントランスフォーメーション(GX)関連法が国会で成立した。これは今後10年の累積で150兆円の投資を促すとしているが、これはこれまでの再エネと同様、国民の負担による投資だ。
150兆円といえば国民1人あたり120万円、3人世帯であれば360万円だ。こんな大金を支払うことに国民がいつ同意したというのか。150兆円のうち20兆円は、今後のエネルギーへの賦課金で賄うとしていて、これは「ステルス増税」だ。
その一方で、岸田文雄政権は、ガソリン、電気代などの光熱費への補助を続け、累積10兆円を超えて延長するとしている。「脱炭素」のためステルス増税し、負担軽減のため補助金を配る。チグハグである。
再エネが最も安いというのは大ウソで、欧州で太陽・風力が最も普及したドイツ、デンマークなどは最も電気代が高い。いくら太陽・風力に投資しても、曇天や無風のときのための火力発電は無くせない。二重投資に過ぎないのだ。
米国では、共和党が、環境に優しい投資「ESG」について「左翼的価値の押し付けだ」として猛反発している。大手資産運用会社ブラックロックは、ESGを止めてしまった。下院に続き、2024年の大統領選では、大統領も共和党が奪還する勢いである。すると米国はパリ協定を脱退し、「脱炭素」も止める。
オランダなど、欧州では次々に右派が台頭している。24年にも国政選挙が相次ぐ予定だが、この勢いは止まらない。移民問題への不満が最大の原動力だが、不条理な「脱炭素」政策への反発もそれに次いで大きい。
24年、世界政治は再エネや脱炭素の幻想から醒め、大きく変わる。
日本の岩盤保守層は「再エネの愚かさ」をよく理解するようになったが、「再エネ最優先」を掲げるリベラル自民党はそれを無視してきた。来たる「政界の大再編」の後、保守勢力が結集して、これを変えることができるだろうか。