はじめに
2023年6月に英国マンチェスターで開催されたNHS ConfedExpo 2023で、英国地方自治体協会(Local Government Association、以下、LGAと略す)の副会長のSarah Pickup氏の新型コロナウイルス感染症に対する当時のLGAと地方自治体の対応を聞くことができた。英国の医療は国営で、国民保健サービス(National Health Service、以下、NHSと略す)を主体に医療提供を行っており、地方自治体は公衆衛生や、高齢者や障害者、長期療養者などの介護施設サービスや在宅介護、ホームレス対応などの成人社会的ケアを担っている。平常時の医療では、NHSに注目が集まることが多いが、新型コロナウイルス感染症下(以下、コロナ禍という)では、地方自治体は、成人社会的ケア、住民や企業に対する緊急援助、新型コロナウイルス検査、ワクチン接種、個人用防護具の配布、ホームレスの保護などの重要な役割を担った。コロナ禍発生当初から、NHSが病床を確保するため、入院中の患者に退院を促したので、地方自治体はNHSや介護施設や在宅介護者と連携を取りながら、病院から地域における介護ケアへの移行を進めた。また、住民や企業に対する緊急援助や検査、ワクチン接種などは、地方自治体が窓口となり、政府、NHS、LGA、民間部門、慈善団体、ボランティアグループなどと緊密に連携を取りながら、多くの対応を行った。
本稿では、2020年1月から4月のコロナ禍初期における英国政府の対応を把握し2020年度のコロナ対策における地方自治体の役割と、その対策における国から地方自治体への政府間財政移転について検討する。政府、会計検査院(National Audit Office、以下、NAOと略す)や下院(House of Commons)、NHS、LGAなどの資料から当時の動向や対策を把握する。
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