論文  財政・社会保障制度  2023.12.21

論考 地方税のデジタル化の現状と今後の課題

―過疎化、公務員減少、人口減少社会の中で税務行政の持続性と納税者の利便性をどこまで実現できるか

一般財団法人地方財務協会『地方税』(20238月号)に掲載

税・社会保障

はじめに

地方税のデジタル化は進展してきているが、過疎化、少子高齢化、公務員減少が進み、将来的には人口8000万人社会となっていく日本において、地方税務行政の持続性と納税者の利便性を実現するためにどこまでデジタル化できるのか、今後も引き続き検討する必要がでてくるだろう。これまで進めてきたデジタル化によって、かえって納税者や自治体が煩雑さや非効率を招くことないよう、地方税のデジタル化の全体を把握し、今後に向けて検討する必要があると思われる課題を言及する。

筆者は、2001年から地方税の、特にICT化をベースにした税徴収の効率化を検討している。2004年の市場化テスト提案や国税局主催の元谷垣財務大臣との懇話会などで、クレジットカード決済の導入や民間企業の活用などを提案した。一方で、自治体の現場にも参画し、2001年に千葉県柏市で税務業務のコスト把握を行い、2005年に大阪府堺市で市税コールセンターを導入し、5か月で3億円徴収し、政令指定都市ワースト3からトップに導くことができた。その後、堺市で徴収一元化も行った。また、2008年までに茨城県、埼玉県、千葉県、京都府の税務システム再構築にも関わってきた。

従来は各自治体や広域的な自治体連携で税務業務の効率化やICT化がなされてきたが、現在では、地方税務手続のデジタル化と税務システムの標準化を中心に進められている。

地方税務手続のデジタル化については、地方税共同機構で進められている。200412月に、地方税共同機構の前身である地方税電子化協議会が運用する地方税ポータルシステム(以下、eLTAXという)を用いた地方税電子申告を開始して以降、電子申請・申告・納付、共通納税、国税連携、年金特徴などの事業が拡充されてきた。

税務システムの標準化は、総務省の研究会を中心に検討されている。20218月に「税務システム標準仕様書【第1.0版】」が公表され、2023831日には「税務システム標準仕様書【第3.0版】」が公表される予定である。総務省は、以前から、自治体内の様々な26業務システム間の情報連携を可能とする地域情報プラットフォーム標準仕様を策定し、一般財団法人全国地域情報化推進協議会(以下、APPLICという)で、地域情報プラットフォーム標準仕様書を公開してきた。また、総務省は、円滑なデータ移行を目指して34業務を対象とした中間標準レイアウト仕様を策定し、地方公共団体情報システム機構(以下、J-LISという)で普及活動をしてきた。そして、経費削減や業務効率化、人材不足などの課題を克服する手段として、共同利用が注目され、総務省は情報システムの共同アウトソーシングや自治体クラウドも推進してきた。

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