レポート  エネルギー・環境  2023.11.02

食料システムの未来は、気候ではなく技術で決まる

だからこそ、研究開発投資がかつてなく急務なのだ

エネルギー・環境

監訳/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志  訳/木村史子

本稿は Patrick T. Brown「Technology, Not Climate, Will Determine the Future of our Food System That’s why R&D funding is more urgent than ever」を許可を得て邦訳したものである。


1968年、アメリカの科学者ポール・エーリッヒとアン・エーリッヒの夫妻は『The Population Bomb(人口爆弾)』を出版した。 その中でエーリッヒ夫妻は、世界の人口、特に南アジアとサハラ以南のアフリカの低所得国の人口が、世界の農業生産の「限界」を超えて増加し、死と絶望が蔓延すると予見した。

エーリッヒ夫妻は間違っていた。人口は20世紀後半も増え続けたが、農業生産高も増加した。そして、1970年以降、地球の気温は摂氏1度以上上昇した。おそらくエールリッヒ夫妻であれば飢饉はさらに悪化すると言ったことであろう。しかしながら、この半世紀は人類史上最も食糧が十分に確保された時代であった。

ポール・エーリッヒが1968年に言ったことは間違っていた。にもかかわらず、環境保護論者、人口抑制論者、そして人類が自給自足し続けることが不可能になる、という不吉なことを予測をする終焉論者にとって、彼は影響力のある発言者であり続けている。2018年、『人口爆弾』50周年に際して、エーリッヒは彼の生涯をかけた論文を、今度は気候変動を加えて再論し、学術誌『Sustainabilityで「人口過剰」が将来の飢餓を引き起こす恐れがあると主張した。

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食料システムの未来は、気候ではなく技術で決まる