ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2023.11.02
本稿はワーキングペーパーです。
近代国家の建設にともなう大きな政治・経済変動は、既存のエリートにとっての危機であると同時に、新しいエリートの勃興をもたらす機会でもあった。先行研究は封建的なエリートの持続性と新興エリートの直面した困難を示してきたが、新興エリートと既存のエリートがどのように融合して行ったかに関する研究は少ない。
本論文では、1902、1914、1927年の日本についてエリート間の親戚ネットワークに関するデータセットを新に構築することによって、エリート間のネットワークの構造、それと政治的・経済的資源の配分との関係、およびそれらの時間的変化について研究した。
主な発見は次の通りである。
第一に、1902年に多くの平民がエリート・コミュニティーに参加するなど、近代化は日本のエリート社会に大きな影響を与えた。第二に、しかしこれらの新興エリートはエリート・コミュニティー内に親戚関係をほとんど持たず、この点で旧封建エリートと対照的であった。しかし第三に1927年になると、新興の経済エリートが相互にまた旧エリートとの間で親戚関係を持つようになり、エリート・コミュニティーの構造が変化した。
そして第四に1927年の親戚ネットワークでは各エリートの中心性とそれぞれの政治的・経済的地位が相関しており、このことはエリート・コミュニティーが階層的構造を持つようになったことを示唆している。
ワーキング・ペーパー(23-017E)The Marriage of Politics and Economy: Elite Fusion in the Age of Modernization