再エネ全量買い取り制度によって太陽光発電を大量導入した結果、再エネ賦課金としていま国民は毎年2・7兆円を電気料金に上乗せされている。1人あたり2万円、3人世帯なら6万円だ。
さて、政府は「グリーントランスフォーメーション(GX)」と称して今後10年間で31兆円の再エネ投資を実現するとしている。投資というと聞こえはよいが、その原資を負担するのは国民だ。いま政府が再エネの切り札としているのは洋上風力だが、一体、電気料金はどうなるのか?
秋田県・能代では、石炭火力発電所の周りに洋上風力が建っている。最近営業を開始した案件は、全量買取制度の対象なので1キロワット1時間あたり36円で電力会社が買い上げている。
風が吹いているときには、その分だけ火力発電の燃料を減らせるわけだが、それによるコスト削減はいくらか。石炭火力の燃料費は4円程度と政府は見通している。すると36円との差である32円は、電気の消費者にとっては追加の負担となる。
もしも、風力発電があれば石炭火力が要らないというなら話は別だが、そうはならない。風力は天気任せなので、風が止まったときには石炭火力が稼働しなければならないからだ。
この地域の洋上風力の設備利用率は35%程度と試算されている。この意味は、1万キロワットの設備容量がある発電所の発電量は、年間平均して3500キロワット、ということである。すると、大ざっぱに言って、風力発電所があるといっても、年間の65%は電気の供給を火力発電に頼り続けることになる。
この状況では、風力発電を建てれば建てるほど、一般の電気の消費者にとっては費用負担が増える一方になる。
では今後、入札制度に変えることで、風力発電は安くなるのか。
日本政府は、洋上風力発電所を大規模に開発する計画を立てている。
その手始めとして、2021年末に入札結果が発表された。「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」の洋上風力発電プロジェクトは、1キロワット1時間あたり13円で三菱商事などのコンソーシアムによって落札された。
これは他社を圧倒する安い価格であったと報じられている。ただしこれでも、4円という石炭火力の燃料費とは9円もの開きがあり、電気利用者への負担がかなり増えることには間違いがない。
洋上風力推進で、事業者は大いに儲かる。賄賂を使って制度を捻じ曲げてでも業績を伸ばそうとする者も現れかねない。だが、それで電気料金が上がり大損をするのは国民だ。
政治主導の「再エネ最優先」政策は止め、来年度策定の第7次エネルギー基本計画から外すべきだ。