メガソーラーが引き起こす問題については、最近よく報道されるようになった。施工が悪いと土砂災害を引き起こす、景観が悪くなる、といったことだ。それにもかかわらず、「脱炭素」のためとして政府は相変わらず「再エネ最優先」を掲げて推進している。しかし、実はCO2(二酸化炭素)が減るかどうかも疑わしい。
いま太陽光パネルのほとんどは中国製なので、製造時に大量のCO2が発生する。太陽光パネルの主原料である結晶シリコンの製造時には、大量の電気を使用するが、中国ではCO2排出量の多い石炭火力が発電の主力だからだ。
新疆ウイグル自治区には、多くのソーラーパネル用のシリコン工場がある。航空写真を見ると、シリコン工場のすぐ隣に火力発電所が建っている。その隣を見ると石炭の炭鉱がある。明らかに、炭鉱のある場所を狙って火力発電所を建て、その電気でソーラーパネルを造っているのだ。つまり中国のソーラーパネルは「石炭の塊」のようなものだ。
さらに、メガソーラー発電所を建設するときには、広大な土地が必要になる。100万キロワットの原子力発電所1基に相当するだけの発電量を確保するためには、東京の山手線の内側の2倍もの面積が必要になる。
さて、メガソーラーで地上を覆わなければ、日本では自然と森林になる。そうすればCO2はそれだけ大気中から吸収されることになる。つまり、メガソーラーは森林破壊なのだ。
いったんメガソーラーを建設すれば、発電しているときにはCO2を出さない一方で、火力発電所のガスや石炭の使用量を減らすことで、日本のCO2の削減にはなる。
それでは、そのCO2の削減によって、建設時に発生したCO2を相殺するのに何年かかるだろうか?
筆者の計算では、中国から輸入したパネルで日本にメガソーラーを建てた場合、10年もかかる。パネル製造時に中国で発生するCO2が8年分、森林破壊による分が2年分ぐらいである。前提など詳しくは拙著『亡国のエコ』(ワニブックス)をご覧いただきたい。
政府資料では、メガソーラー建設時のCO2はとても少ないので、太陽光発電はCO2を出さないと見なしてよい、としている。だが、実際はまったく無視できるような量ではない。
ちなみに、中国は現在日本の20倍ものキロワット数の石炭火力発電所を有しており、今後数年でさらに日本の6倍を新設する計画だ。そこで、できたパネルを「CO2削減のため」といって、有難がって使うのが日本、というのは全く愚かしい。