コラム  国際交流  2023.10.19

中国経済悲観論に対する欧米専門家の見方は総じて冷静|日米中関係/ヒアリング

~米中対話は増えても関係改善効果は見られていない~

<2023年9月4日~22日 米国欧州出張報告>

中国経済

<主なポイント>

〇 2Q46月期)の中国経済急減速および先行き見通しについては米欧においても悲観論が多数派だが、米欧の中国経済専門家の多くはそれほど悲観的ではない。

〇 米国では中国経済が今後長期的に停滞することを喜ぶ人が多く、とくにワシントンDCではその傾向が強い。ただし、そうした人々は多数の中国経済専門家の以下のような認識を知らない。第1に、中国政府の経済政策運営方針が改革開放から統制経済に転換するとは考えにくい。第2に、中国の不動産市場(34級都市中心の中長期的停滞)の現状は深刻ではあるが、日本の1990年代やリーマンショック直後の欧米の状況(不動産市場全体のバブル崩壊)に比べれば、落ち込みは比較的軽微である。第3に、米国の国際政治学者や議会関係者は半導体輸出規制等の効果が大きいと見ているが、中国国内の足許の投資動向を見る限り大きな影響は見られていない。

〇 外資企業の投資環境に関して、足許の主なマイナス要因として指摘されているのは次の5点。①経済の減速と先行き不透明感、②新型コロナ終息後も、中国に戻りたくないと考える欧米人が多いことによる、重要ポストに就任する人材の確保難、③中国当局による米国・日本企業幹部社員等の拘束、反スパイ法施行、④半導体輸出規制等の対中制裁措置強化懸念、⑤中国市場の競争激化に伴う外資企業の収益減少。

○ 欧米企業の対中投資姿勢は、競争力が劣り投資規模が小さい企業は投資額を減少させるが、投資額の大きな競争力の高い企業は引き続き投資を拡大する可能性がある。このため、全体としては投資額の伸びが鈍化する可能性は高いが、投資額全体の規模がピークアウトして減少に転じるかどうかについては意見が分かれている。

〇 6月以降、米国の主要閣僚の訪中が相次いだが、米欧の専門家に実態を確認すると、改善効果はほぼないという見方で一致していた。

〇 バイデン政権が少しでも中国に対して歩み寄りの姿勢を示せば、議会が厳しくバイデン政権を批判することが明らかである。このため、大統領選挙キャンペーン本格化の時期を間近に控えて選挙にマイナスとなる対中融和政策は選択肢となりえない。

〇 米国製先端半導体製造装置の中国生産拠点向け輸出を禁止する広範な規制について、米政府が韓国・台湾企業に対する無期限猶予を事実上認めた。これは、韓国・台湾企業の半導体生産停滞が多くの米国企業に大打撃を与えることが判明したため。

〇 フランスは引き続き中国とのコミュニケーションを維持することを重視している。一方、ドイツは7月に中国戦略を公表したが、これが従来のメルケル政権の対中政策方針を基本的に踏襲していると評価されており、今後の動きが注目されている。

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