コラム  エネルギー・環境  2023.10.10

「脱炭素と中東エネルギー地政学研究会」 中間報告

脱炭素で中東をはじめ世界のエネルギー地政学がどう変わりどのような影響が生じるのか

脱炭素と中東エネルギー地政学研究会

エネルギー・環境

1.はじめに

1)問題意識

近年、特にCOP21におけるパリ協定合意後、脱炭素への動きが世界的に加速している。これは進行する地球の平均気温上昇への危機感の裏返しでもある。一口に脱炭素、クリーンエネルギーへのシフトと言っても、その内容は複雑で多岐に亘り、エネルギー分野を優に超える社会の様々な仕組みや人々の生活のあり方にも影響を及ぼすことが予測されている。しかしながら、世界が脱炭素へとシフトする過程で、その影響の大きさや広がり、変化の速度などについては、いくつかの先駆的な研究はあるものの、未だその全容について十分には明らかにされていない。

「脱炭素と中東エネルギー地政学研究会」では、クリーンエネルギーへのシフトにより特に大きな影響を受けると予想される石油・ガスの一大産出地域であるペルシャ湾岸地域を中心とする中東の変容を通して、脱炭素化の現状について理解を深めるとともに、中東のエネルギー変革が世界のエネルギー地政学にどのような影響を与えるのか検討しようとするものである。また、脱炭素への動きに関して起こりうる変化、特に中東における変化が日本にどのような影響を及ぼすのかについても検討を継続する。一つには、資源エネルギー庁によれば、本年6月の原油輸入についてみると中東依存度は97.3%に上昇している[1]。本来供給源を多様化することは安定供給の要諦であり、この数字自身をいかに低下させていくのか、あるいは、再生可能エネルギーの導入を一層加速することでエネルギーミックスの中における原油の占める割合を相対的に小さくしていくなど、対策を講じていくこと自身大きな課題である。その一環で、外交等を通じて日本が中東の安定化に貢献することによって「リスク」を実質的に小さくしていくことも一つの方策であろう。日本中東双方のお互いに対する関心が高まり、関係を強化することも大切だ。これらを踏まえつつ、グローバルな脱炭素の流れの中で、日本の外交、経済やビジネスにどのような影響があり、そのために、日本はどのような「準備」をするべきなのかについても提言を行う予定である。

こうした目的を踏まえつつ、中間報告としての本稿は、今後の検討の基礎として、まず脱炭素の影響について、広くその外縁を明らかにしようしている。中東地域のみならず全世界への脱炭素が及ぼす影響なども視野に入れ、エネルギー分野を超えた国際関係、外交、経済、ビジネスなど広いスコープを持って論じることをその趣旨としている。またこうした作業を通じて、脱炭素の過程や将来の世界の姿について知見を積み上げ、最終的には、脱炭素に関する日本における官民の問題意識を高め、未来への道筋をより明らかにすること、同時に、これまで築いてきた日本と中東との関係を将来においても意味のあるものとして継続することを企図している。

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「脱炭素と中東エネルギー地政学研究会」 中間報告