中国経済は2023年に入ると回復基調に転じたが、人々のコンフィデンスは十分に回復していない。金融リスクが解消されていない中では、金融面からの刺激には限界があろう。中国共産党指導部は強い経済刺激策の導入ではなく、質の高い経済成長につながる構造改革の支援に力を入れているようにみえる。政策の効果を高めるためには、地方政府の財政基盤の再建と民間部門の活力強化が重要であろう。

景況感は弱含み

中国経済は、2022年12月の「ゼロコロナ政策」の大幅緩和を機に、上向きに転じた。年が明けた23年第1四半期の実質GDP成長率は前年比4.5％で、年間5％前後という政府目標の達成が十分に期待可能な数値となった。ただし、この間の主要経済指標の動きをみると、全体に力強さに欠けた感があり、その後も不安定な様相を示している。このため、企業関係者や消費者のコンフィデンスは十分に回復していない。

国家統計局は、23年5月の国内経済情勢について、「引続き回復情勢を保ち、経済構造の転換と高度化が進んでいる」ものの、「国際環境は複雑で厳しく、国内の構造調整への圧力は大きく、経済回復の基盤は固まっていない」と判断し、「改革の深化と高いレベルの対外開放の安定した推進が必要である」と説明している（23年6月15日、国民経済総合統計司長による記者会見）。