ここ1、2年で、自然災害を何でも気候変動のせいにする風潮が高まった。国連トップのアントニオ・グテーレス事務総長は「世界各地の異常気象は全く自然の現象ではない。CO2による人為的な気候変動のために災害は過去50年間で5倍になった」といった発言を繰り返している。
だが、これは全くの偽情報だ。
気象観測のデータを見ると、台風もハリケーンも頻発化や激甚化など起きていない。大雨の人為的な激甚化なども起きていない。
最近、よく「日本の大雨が増えた」と報道されるが、それはアメダスが整備され始めた1976年ごろと比べてのことだ。そのころは、たまたま雨量が少なかったのだ。その前の50年代の年間雨量は、ここ10年とほぼ同じだった。雨量はもともと自然変動が大きいのだ。
「50年間で5倍」になったのは災害の「報告件数」に過ぎない。過去50年で世界の人口は増え経済は成長したので、より多くの人々や財産が災害に遭うようになった。また、行政組織も整備されたので、より多くの報告が上がるようになった。決して物理的に異常気象が増えたわけではない。
150年前に比べてCO2濃度が1.5倍になり気温が1度高くなったことは、おおむね事実だ。
そして、気候危機説の論者はあと0.5度で1.5度になれば破滅的だという。では、もしそうならば、すでに1度気温が上昇したことで、その前兆は現れているのか。
統計が示すのは真逆のことだ。気象災害による死亡数は、過去100年にわたり、世界全体で激減を続けてきた。防災インフラが整備されたからだ。米、小麦、大豆、トウモロコシといった穀物の収穫量は世界で増大を続けている。肥料・農薬や品種改良などの技術進歩のおかげだ。
シミュレーションによる不吉な未来予測はある。だが、その数値モデルは過去の観測・統計で十分に検証できていないものばかりだ。地球環境のような複雑な問題ではモデルよりも観測と統計こそ重要だ。そのいずれも気候危機の兆候など全く示していない。
日本のCO2排出を2050年までにゼロにしても、気温はせいぜい0.0075度しか下がらない。地球温暖化はゆっくり僅かであり、日本は世界の3%しか排出していないからだ。
日本の安全保障状況は風雲急を告げている。エネルギー供給の8割を占める化石燃料は生命線だ。短期的には備蓄を強化し、中東や台湾の有事に備えねばならない。長期的には安価で安定な供給を確保し、産業を支えねばならない。
そうしないと日本は中国に飲み込まれる。政府は脱炭素最優先を止め、安全保障最優先にかじを切るべきだ。そこでは化石燃料こそが重要な役割を果たすことになる。