中国の習近平政権は、2023年から27年まで、これまでの慣例を覆して3期目に入り、独裁色を強めた。この3期目の間に「台湾併合」に動くとの見方が高まっている。もし、24年末の大統領選で米国が混乱するようなことになれば、その隙に乗じ軍事侵攻するかもしれない。
米中軍事衝突のリスクが高まると、米軍の空母機動部隊は台湾付近から退避し、グアムまでいったん下がると見られている。なぜか。いま中距離ミサイルについては「中国2000」に対して、「米国はゼロ」という圧倒的な状態で、空母が撃沈されてしまうからだ。
すると日本付近の制海権は、米中どちらも完全には把握しない、という状態になる。この状態で輸送船が攻撃を受ければ、日本への海上物資輸送は滞る。
中国の恫喝に日本が屈服すれば、日本の基地利用ができない米国も敗退する。
かかる事態を抑止するためには、シーレーン(海上交通路)を脅かされても日本が屈服しない備えをして、中国にあらかじめ見せつけておかねばならない。
日本のエネルギー供給の8割は、化石燃料である天然ガス、石炭、石油である。発電も7割を化石燃料に頼っている。そして、日本は化石燃料のほぼ全量を輸入に頼っている。
石油は運輸燃料だけでなく工場でも多く使われている。天然ガスも家庭や店舗だけでなく工場での使用量の方が多い。石炭は製鉄と発電が主な用途である。このいずれが欠乏しても、日本の経済は窒息し、継戦能力は危うくなる。
シーレーン途絶に備えて、化石燃料供給を維持しなければならない。このためには、備蓄の量の積み増し、そして、エネルギーインフラの対テロ防御の強化が喫緊の課題となる。石油備蓄は200日以上あるが、破壊工作を受けるかもしれない。石炭は現状では1カ月の在庫があるだけだが、これは増やせるのではないか。
原子力の再稼働も急がねばならない。原子力は、ひとたび稼働すれば、燃料を交換することなく1年以上発電を続けることができる。準国産エネルギーと言われる所以である。
いまテロ対策のためとして原子力を止めているが、1点豪華のテロ対策など意味がない。あらゆるインフラをくまなく防御しなければならない。
ひとたび政治的な決断さえ下せば、1年間でもかなりの成果を上げることができるだろう。技術的、経済的に言って、さほどハードルの高いことではない。
1年間の戦争を戦い抜ける「エネルギー継戦能力」があれば、中国は日本に手を出しにくくなり、「シーレーンを封鎖する」という恫喝も通用しなくなる。平和のためにこそ、戦争への備えが必要なのだ。