コラム  グローバルエコノミー  2023.07.05

対中政策における米国とEUの歩み寄り|日米中関係/ヒアリング

~G7広島サミットの成果を欧米の外交専門家が高く評価~

〈2023年5月21日~6月8日 米国欧州出張報告〉

中国

〈主なポイント〉

  • 米国政府は本年11月にサンフランシスコで開催されるAPEC首脳会議を成功させることを重視している。それには米中間での中身のある事前協議が必要だが、年初来の米中関係悪化のため4月までは対話の準備を進めることができなかった。
  • 気球問題については、バイデン大統領がG7広島サミット直後の記者会見(521日)で、この気球を「this silly balloon」(この馬鹿げた気球)と呼び、中国が故意に飛ばしたものではないと米国政府が認識していることを示すメッセージを送った。
  • 対ロシア武器供与疑惑についても、ブリンケン米国務長官が、6月の訪中の最後に北京で行われた記者会見で、供与の証拠は確認できていないと発表し、鎮静化した。
  • 5月以降、米中間の対話が再開し、ハイレベルでの米中対話が実施されている。しかし、厳しい対中政策を継続しながら対話の回数を増やしても米中関係を改善するような成果を生むことは期待できないというのが米国の中国専門家の一致した見方。
  • 米国内の反中感情は依然として根強く、来年11月の大統領選に向けて、与野党の議員の間で唯一意見が一致しているのは対中強硬論。今後これがますます強調されるため、大統領選までは米中関係の実質的な改善は望めないとの見方が大勢である。
  • 4月下旬以降、バイデン大統領を始め、米国政府の主要閣僚が中国に対するデカップリングを明確に否定したほか、中国に対してある程度融和的な姿勢を示した。
  • 現在の米国では中国に対して融和的な姿勢を示すことはすべて悪だとする考え方が蔓延し、理性的な判断が働かなくなっている。これは米国内政における民主党VS共和党の対立構図(融和はすべて悪)と同じように見えるとの指摘がある。
  • G7広島サミットの成果を米国欧州の専門家・有識者は高く評価している。ある専門家はその成功を「G7 is back」と表現した。具体的には、第1に、ロシア・ウクライナ戦争に関して、西側諸国の結束を示すことができたこと。第2に、対中政策についても、米国・欧州の間でバランスの取れた声明を取りまとめることができたこと。第3に、広島を舞台にしたことで世界中の人々に平和の大切さを共感させたこと。第4に、グローバルサウス等の首脳も参加し、G7と世界の連携を示したこと等を指摘。
  • マクロン大統領が訪中した目的は習近平主席との個人的信頼関係の強化にある。信頼関係を前提に習近平主席の海外での言動に関する評価を本人に対して率直に伝え、同主席が誤解に基づいて行動しないようにすることが狙いである。ただし、習近平主席に対してどこまで影響を与えることができているのかについてあまり多くは期待できないとの見方もある。

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