IPCCの気候モデルによるシミュレーションは、観測値と比較して温暖化を過大評価していることは以前にも何回か述べてきた。過大評価の程度は、地域・期間・高度などによって異なるが、米国の元NOAAのロイ・スペンサーが、特に酷い例を紹介している。
図は、米国海洋気象庁NOAAの公式の気温観測データ(青い棒グラフ)を、IPCCで用いられている36のCMIP6気候モデル(赤い棒グラフ、SSP245排出シナリオに基づくもの、データセットリンク)によるシミュレーション計算の値と比較したものだ。
縦軸は、米国のコーンベルトとよばれるトウモロコシ生産地12州における、トウモロコシ生育期(6月、7月、8月)についての、1973年から2022年までの50年間の地域平均気温の上昇の速さである。
これを見ると、観測値は10年あたり0.1℃程度と僅かであるのに対して、シミュレーションはことごとく極端な温暖化を示している。過去についてこれだけ過大評価するモデルであれば、将来についても相当な過大評価になることは間違いなかろう。
「地球温暖化でトウモロコシが暑さにやられて生産できなくなる」といった将来予測は、このようなシミュレ-ションに基づいたものだ。
ロイ・スペンサーは、農業事業者に対して、このような将来予測を信じるな、とアドバイスしている。
なおこのNOAAの観測値には都市熱の影響が混入していることはほぼ確実なので、過大評価の実態はこれよりも酷いと思われる。