<主なポイント>
○23年1Qの実質GDP成長率は、前年比+4.5%と、前期(同+2.9%)に比べ伸び率は上昇したが、7期連続の5%割れ。
○輸出は日米欧向けが減少したが、中国からアセアン諸国に生産拠点を移す水平分業の拡大を背景に部品等の輸出が伸び、アセアン向け輸出が増大した。その主な要因は、アセアン諸国の生産コストが低いほか、対米輸出関税が低いことによるもの。
○固定資産投資は、製造業とインフラ建設は堅調を維持する一方、不動産開発は前年比-5.8%と、昨年(22年通年同-10.0%)に比べて予想以上の改善を示した。
○業種別の市場動向を見ると、自動車、スマホ・PC等電子機器、家電・家具等不動産関連などの耐久消費財の販売が伸び悩んでいる。加えて、共同富裕政策やゼロコロナ政策の後遺症もあって、民間企業の政府に対する信頼回復およびコロナ前の力強い投資意欲の回復には今後2~3年を要するとの指摘がある。
○中国政府は本年、経済安定確保を国家政策の最優先課題に掲げ、積極的な財政政策をさらに強化する方針の下、昨年以上にインフラ建設拡大に注力すると見られている。
○不動産市場については、1~2級都市を中心に不動産販売が予想外の急回復を示している。しかし、不動産開発業者の資金繰りは依然厳しいため、不動産開発投資が回復に向かうのは本年後半以降になると見られている。
○消費財小売総額は、前年比+5.8%と前期(同-2.7%)から急回復。これはゼロコロナ政策の解除により飲食、宿泊等サービス消費が一気に回復したことによるもの。しかし、消費者が先行きの収入に対する不安を払拭できないため、購買姿勢は慎重。
○本年の実質GDP成長率見通しは5%台を予測する見方が大勢。1Qの成長率が予想を上回ったため、見通しが上方修正され、一部には6%台に達するとの見方もある。
○米国企業は本年入り後、役員が中国を訪問した企業の比率が43%に達した。欧州企業は独ショルツ首相、仏マクロン大統領とともに多数の企業が訪中。米欧とも積極的な対中投資姿勢を示している。一方、日本企業は製薬会社幹部社員拘束事件以降、経営層の訪中を見合わせる企業が増加。欧米企業の積極姿勢とは対照的な慎重姿勢。
○中国市場は規模が大きく、求められる技術水準も高い。高い品質と供給量の確保に必要な巨額の投資を実行する資金力がなければ中国で勝ち残ることができない。