米国ではここ数年、民主党によってLGBTや人種・移民問題など、さまざまな問題について左翼リベラル的な価値が広められてきた。伝統的な価値を重んじる共和党と、あちこちで軋轢(あつれき)と分断を生んでいる。
その1つが「ESG投資」だ。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉で、要は「良い事」に投資しましょうということである。だが、実態としては環境、それも「脱炭素」一本やりになっている。
ジョー・バイデン大統領率いる民主党政権は、年金、保険、債券、株式などを預かったり投資したりする金融機関に対して、ESGのルールに従うよう制度を整えてきた。
これによって、石炭、石油、天然ガスを採掘したり、それを用いて発電する事業者は、投資や融資を受けられなくなったり、事業の売却を余儀なくされてきた。「CO2(二酸化炭素)を出す事業はケシカラン」というわけだ。
これで怒ったのが共和党の州知事たちだ。「州民のお金を預かっておきながら、自分の州の産業に投資しないとは何事か?」というわけだ。そこで仕返しに、ESG投資を標榜(ひょうぼう)する機関から、州のお金を引き揚げてしまった。
さらに米国連邦議会では、上下両院とも、年金基金のESG投資を禁止する決議を通してしまった。共和党のみならず、民主党議員の一部まで造反し、超党派での可決になった。これはバイデン大統領が拒否権で覆したが、米国議会の本気度が分かるというものだ。
共和党議員が怒る理由は、選挙で選ばれたわけでもないお金持ちや高級官僚たちが、金融機関を利用して自分たちエリート好みの特定の価値観を強制する、という構図が国民主権に反するからだ。
彼らは左翼リベラル的な価値観を強制する「覚醒した資本主義」(Woke Capitalism、ウオーク・キャピタリズム)に我慢がならない。気候危機説は誇張が過ぎることも知っている。
さて、日本でもESG投資が流行りで、化石燃料を扱う事業者は対応に苦慮している。だが、どの地方でも、毎日、石油で動くトラックのお世話になり、ガスで暖房や煮炊きをしている。化石燃料の安定供給をしてくれるのは大事な産業であり、地元の経済もそれで回っているのに、そこに金融機関が投融資しないのはおかしいではないか。
まして、そのルールを決めるのが、国民ではなく、海外の左翼リベラルのエリートでよいのか。
米国の「反ESG」の急先鋒(せんぽう)はフロリダ州のロン・デサンティス知事で、いま共和党で最有力な大統領候補だ。日本も米国と一緒に変わろう。年金や保険金を国民の手に取り戻そう。