東京都は15日、新築住宅への太陽光パネル設置を義務付ける条例案を可決した。この条例の施行は2年余り後の2025年4月からとなっているが、これは実現しないとみている。なぜなら、それまでには、ますます「太陽光パネルの問題点」が噴出するからだ。
太陽光パネルの中国製のシェアは95%にまで達し、その大半について「新彊ウイグル自治区での人権弾圧、強制労働」との関係が指摘されている。亡命ウイグル人による民族団体「世界ウイグル会議」は「ジェノサイドへの加担」であるとして、中国製の太陽光パネルの使用を止めるよう呼び掛けている。
米国は6月に強制労働に関与した製品の輸入を禁止する法令を施行し、いま米国の税関には中国製太陽光パネルを積んだコンテナが足止めされ山積みになっている。EU(欧州連合)も同様の法令の検討を開始した。強制労働の関与が疑われる太陽光パネルは、欧米に続いて日本でも輸入禁止になるに違いない。すると設置義務化どころではなくなる。
また、太陽光パネルは経済格差を拡大する。
建築主は150万円のパネルの元を取れるというが、このうち100万円は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」などで一般庶民から徴収されたものだ。東京に広い家を新築できる金持ちだけが得をして、持ち家すらない庶民の電気料金は上がる一方だ。こんな制度はもはや持続不可能だ。
太陽光パネルは、いまの日本のエネルギー政策の抱える大きな問題の縮図になっている。
菅義偉政権の「2050年CO2ゼロ」宣言以来、日本のエネルギー政策はすっかりおかしくなった。50年にCO2ゼロなどできるはずがない。
欧州は再エネ推進でCO2ゼロを目指すとしたが果たせず、実態はロシアの天然ガス頼みとなった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はその弱みにつけこみ、ウクライナの戦争とエネルギー危機を招いてしまった。欧州はエネルギー安定供給を失い、世界一光熱費が高くなってしまった。
日本はこの大失敗に学ぶこともなく、愚かにも菅政権の小泉進次郎環境相と、河野太郎行政改革相が押し込んだ「再エネ最優先」を掲げ続けている。岸田文雄政権はグリーントランスフォーメーション(GX)と銘打って、さらに再エネを拡大し、ますます光熱費が高くなる政策を実施している。
太陽光パネル義務化の論争を足掛かりにして、これまで同調圧力に支配され、「物言えば唇寒し」の状態だった「脱炭素政策」の抱える問題を公に論じねばならない。
日本人を不幸にし、中国を利するだけの、すっかり歪(ゆが)んでしまったエネルギー政策を正そう。高い光熱費と慢性的な電力不足に別れを告げ、安くて安定したエネルギーを国民の手に取り戻そう。2023年はそのような年にしたい。