小池百合子知事の東京都が、新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置を義務付ける環境確保条例の改正案が15日の都議会本会議で賛成多数で可決、成立した。自民党は反対した。この条例を「中国の人権問題」「経済の問題」「災害時の危険」などの視点から反対してきた、エネルギー政策研究の第一人者で、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹が緊急寄稿した。
「天下の悪法」といえる条例が成立した。反対の請願を出して否決された筆者は、まずは1敗したわけだ。しかし、条例の施行は2025年4月となっている。これで終わりではない。
都議会の審議で、「太陽光パネルの問題点」が次々に指摘され、紛糾したことは貴重だった。自民党が最後に反対に回ったことも大きい。他党も考えを変えた方がいい。
都の説明は、以下のようにデタラメだった。
第1は、人権の問題だ。太陽光パネルは、世界シェアのほとんどを中国製が占め、新彊ウイグル自治区での人権弾圧、強制労働との関係が世界的に指摘されている。米国に続き欧州も中国産パネルは使用禁止になる。
都は義務化の一方で、「事業者は人権を尊重すべし」と言うが、無理難題だ。都は事業者に責任を押し付けるのか? そのような義務付けが許されるべきか?
亡命ウイグル人による民族団体「世界ウイグル会議」のドルクン・エイサ総裁は今月5日、都内で開いた記者会見で、「(中国製パネルが使用されれば、東京都は)ジェノサイド(民族大量虐殺)に加担することになる」と訴えている。
第2に、経済の問題がある。パネルの費用は、再エネ賦課金など電気代のかたちで都民・国民が負担する。太陽光発電はせいぜい火力発電燃料の節約分しか価値はない。本質的に「二重投資」であり、火力発電所への投資を減らせない。
都は「建築主は元が取れる」と言う。だが、戸建てを新築する都民の150万円のパネル代のうち、100万円は他の都民・国民に付け回される。この格差拡大を都は説明していない。
第3は、災害時の危険だ。東京の東部に位置する江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)においては、大規模水害が想定されており、パネル水没時には感電の危険がある。
都は「まだ感電事故は起きていない」「水没時には専門家を呼ぶ」などと説明する。だが、大規模水害が発生して、あたり一面にパネルが水没しているときに、悠長に専門家を呼べるのか。「まだ事故は起きていない」から義務付けるとは何事か。十分に想定されるリスクなのだから、よく安全を確認すべきだ。
条例施行まで2年以上ある。私は施行前に義務化を阻止することは可能だとにらんでいる。なお追及を続けたい。