メディア掲載 グローバルエコノミー 2022.12.12
Le Mondeに掲載(2022年11月25日)
この記事はアジア経済に関する月1回のコラムシリーズの1本として、2022年11月25日付けの仏ル・モンド紙に掲載されたものである。原文は以下のURLからアクセスできる:(翻訳:村松恭平) https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/11/25/le-cas-coreen-nous-apprend-beaucoup-sur-ce-a-quoi-pourrait-ressembler-l-homo-numericus_6151510_3232.html
セバスチャン・ルシュヴァリエが本コラムで報告するのは、デジタル世代の学業成績とスマートフォンの使い方の相関関係についての韓国の研究だ。その影響は使い方によって異なる。
韓国は国民全体におけるスマートフォン普及率が世界一の国である(2019年には18歳以上の韓国人の95%がスマートフォンを所有していた)が、特に小・中学校、高校の生徒たちを対象にしてもそうだ。スマートフォンの利用は韓国の若者の認知能力に少なからず影響を及ぼしている。
教育学の研究者Sunyoung Han氏は、スマートフォンを幼少期に使うこととその使い方の多様性(学習のためだったり遊びのためだったり)が自律的学習の能力および学業成績に及ぼす影響を評価した(« Impact of smartphones on students : How age at first use and duration of usage affect learning and academic progress », « Technology in Society » n° 70, 2022)。
本研究までは、これらの問題に関する諸々の実証研究による結論は決定的ではなかった。それらの実証研究が証明したのは、スマートフォンの教育利用が学生たちの意欲やコミュニケーション能力を高め、そのことが学習プロセスと学習能力にプラスの影響を与えるというものだった。しかし他方では、中毒行動を原因とする身体および精神へのマイナスの影響も特定された。
それに対して本論文は、2018年にソウルで実施された、2000年に生まれた約3,000人の若者——そのうち約3分の2がこの調査の時にすでにスマートフォンを使ったことがあった——の行動に関する長期的な調査のデータを集めながら、学習と学業成績への影響を非常に細かく考察している。
このデータベースには、スマートフォンを初めて利用した年齢、毎日の操作時間、主な利用目的(学習、遊びなど)だけでなく、学習能力や学業成績に関する情報も含まれている。
まずに、スマートフォンを使い始めた年齢がその後それとともに過ごす毎日の時間数に影響を及ぼし、さらにいくつかの依存形態を生じさせる。その"分かれ道"は小学校の段階にある。中学生になってからスマートフォンを使い始めたケースでは、大きなマイナス影響は見られない。
そして、スマートフォンを遊びのために使うのか、それとも学習のために使うのかによって影響は異なる。前者のケースでは、その利用が依存のリスクを高め、自律的学習の能力を減らしてしまう。後者のケースではそうではない——二つのケースを明確に分けることができればだが。
しかし、Sunyoung Han氏は調査結果の解釈について慎重な姿勢を保っている。というのも、スマートフォンを早くから使うことと遊びのための利用が、数学と英語の成績には全体としてマイナスの影響があることを見てとったものの、国語の成績ではそうではなかったからだ。
この韓国のケースは、ダニエル・コーエン(Homo Numericus : la civilisation qui vient, Albin Michel, 2022[未邦訳])の表現を借りれば、「デジタル人間(ホモ・デジタリス)」がいかなるものになるかについて私たちに大いに教えてくれる。それほど韓国はこの領域における実験室とみなされている。
確かにスマートフォンは私たちの日常生活に役立ち、情報へのアクセスを容易にすることと私たちが世界に関心を持つことに貢献している。だが、もしその使い方をうまく制御できなければ、スマートフォンはとりわけ我々の子どもたちにとってまったく逆の影響を生み出しうる。特に目立つのは、スマホ中毒・引きこもり・知能の全体的な低下といった現象である。