メディア掲載  財政・社会保障制度  2022.11.04

日本における医薬品の価値情報文書の作成及びその活用

~Value Dossierのモックアップ~

医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス Vol.53 No.4 (2022)に掲載

医療政策

1. はじめに

科学技術の進展に伴い,疾患に関する基礎的な知見,疾患の早期で確実な診断を可能にする技術,治療のための新しい手法,最新技術を駆使した治療薬など,医療の進歩は急速に高度化して選択肢が増えるとともに,医療関連費は高額化している.

医療・医薬品を取り巻くこのような環境変化の中で,1990年代末に科学的根拠に基づく医療(evidencebased medicineEBM1)が臨床における意思決定の世界標準となり,「経験に基づく医療」からのパラダイムシフトが起こった.EBMは,患者や医師による意思決定に援用されるエビデンスの合成と意思決定のプロセスであり2),医師の専門的知見を踏まえつつ3),患者にとっての価値を目指す.そこでは,個別の患者が重要と感じる「価値」を踏まえた意思決定に着目する1, 2).患者個別のニーズに対応した意思決定は,「現在の状況を理解し,最良の方法を決めるために,医療者と患者本人が協働すること」(shared decision makingSDM)として重視される4)SDMのないEBMはエビデンスによる圧政(evidence tyranny)に転ずると指摘されており5),日本の医療においても,パターナリズム(医者にお任せの医療)は過去のものとなりつつあり,個々の患者が自ら選択できる治療方針(治療目的や,治療過程において重要と考える効用など)が示されることが基本となってきている6).


医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団より許可を得て医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス Vol.53, No.4,322~338(2022)より転載。

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