メディア掲載 グローバルエコノミー 2022.11.01
Le Mondeに掲載(2022年10月21日)
この記事はアジア経済に関する月1回のコラムシリーズの1本として、2022年10月21日付けの仏ル・モンド紙に当初掲載されたものである。原文は以下のURLからアクセスできる:(翻訳:村松恭平) https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/10/21/au-japon-une-sobriete-forcee-apres-fukushima_6146780_3232.html
2011年の福島原発事故後の電力不足に対処するために日本が採用した解決法を、二人の研究者が分析した。それについてセバスチャン・ルシュヴァリエが本コラムで報告する。
2011年3月に起こった福島原発事故は、発電に影響を及ぼす打撃を受けて——(1つの例外を除く)日本のすべての原子力発電所が停止したことで、この国の発電量は30%減少した——採用されたエネルギー節約対策の方法および効果を分析するのに、その期間と規模の観点から特異な経験となっている。
日本は確かに他のエネルギー源を見つけなければならなかったが、とりわけその消費を減らす必要もあった(« Responding to electricity shortfalls : electricity-saving activities of households and firms in Japan after Fukushima », Osamu Kimura et Ken-Ichiro Nishio, Economics of Energy & Environmental Policy n° 5/1, 2016)。このエネルギー節約対策のおかげで、約4年間、東京・大阪圏域において、すべての利害関係者の共同努力を通じて電力需要を15%以上減らすことができた。
この二人の経済学者は、電力消費量の変化に関する分析に加え、家庭と企業に対する詳細な調査もいくつか実施した。というのも日本政府が電力消費を減らすことを大手メーカー等に課し、国民にも節電協力を要請したからだ。
政府の政策は、電力の需要・供給の不均衡の継続評価を行う専門委員会によって指針が示された。総計によると、エネルギーの節約に最も貢献したのは大企業であり、2011年に25%以上、その後2014年までは15%以上、電力消費を減少させた。電気を作り出そうと企業内で実施された解決法や、閑散期における業務時間の変更も大きな役割を果たしたが、それらはオペレーション上の困難をもたらしたために長続きしなかった。
それよりも些末ではあるが無視できないこととして、日本政府は「クールビズ」キャンペーンを実施した。サラリーマンにオフィスでよりカジュアルな服を着用するよう、そうすることでエアコンの使用を減らすよう促したのだ! 店舗のほうは、過剰だとみなされた売り場やショーウインドーの照明の光度を持続可能な方法で弱くした。家庭は、2011年、すなわち危機の真っ最中に、エアコンによる電力消費を40%以上減少させた——暖房を使う冬よりも、非常に暑く湿気の多い日本の夏のほうが問題だった。
この調査を通して、様々な電力消費者の動機をよりよく理解することもできる。危機と価格統制という状況下で、その動機は企業にとっても家庭にとっても最初の頃は主として公徳心によるものだった。その後、電気料金が上がり始めると(2014年には2010年比+30%までに至った)、経済的な理由が増していった。
研究者たちは動機の3番目のタイプを読み取っている——電力消費者たちはこの分野での行動規範に関する適切な情報を受け取っていたので自らの消費量を減らした、というものだ。この調査結果が示しているのは、的の絞られた特定義務だけでなく適切な情報も手にしたことで消費者たちが自分の行動を変えることが解決の一部であることを十分に自覚するならば、価格を大幅に上げずに電力需要を短期的に大きく減らすことが可能である、ということだ。
何よりも、持続的な節約を成し遂げるには緊急対策だけでなく、行動およびテクノロジーの両面における構造的な行動が要求される。今回のケースでは、古い設備を新しく且つより効率的な設備に置き換えることが決定的な役割を果たし、そのことが企業にも家庭にも大きな経済コストとなった。インセンティブと強制のこうした組み合わせが、エネルギー安定供給の追求と気候変動との闘いという二重戦略の中心になければならない。