<主なポイント>
〇米国の対中外交姿勢は過度に挑発的でリスクが大き過ぎると見る米国の中国専門家は多い。それが中国を刺激して台湾への武力侵攻に踏み切らせることになれば、日本、韓国など関係国は米軍とともに参戦することが想定されており、東アジア全体を戦争に巻き込む深刻なリスクを含んでいることが懸念されている。
〇ペロシ下院議長の訪台の目的は、中間選挙向け政治パフォーマンスの性格が強いと見られている。同氏は台湾の民主主義を支持するためであると述べているが、中国専門家は台湾の民主主義を抑圧するリスクを高めるものであると批判している。
〇米国政府は「1つの中国」を堅持する姿勢は変わらないとの発言を繰り返すが、バイデン大統領の台湾防衛発言、台湾への武器供与の常態化等が中国の対米不信を招いたため、中国はすでに米国は「1つの中国」を無視していると受け止めている。
〇米国議会では台湾を正式な国家として承認するのにほぼ等しい内容を含む「台湾政策法案」の審議が行われている。もしこの法案が可決されても、バイデン政権の下ではこれが実施される可能性は低いと見られている。最大のリスクは、2024年の大統領選挙後に共和党候補が大統領に就任すれば、誰が就任してもこれを実行に移す可能性が高いことであると多くの中国専門家が強い懸念を示している。
〇中国はウクライナ侵攻後のロシアの苦境を見て、台湾の武力統一がもたらすリスクが以前より高まったと認識し、以前より武力統一に慎重になったと見られている。
〇米国は権威主義VS民主主義のイデオロギー対立を強調するが、欧州は中国を多面的に評価し、中国を経済的パートナーと捉え、デカップリングは考えていない。
〇EUはウクライナ問題に関して米国とは同一歩調をとらず、ウクライナへの軍事支援が行き過ぎないように米国に働きかけている。台湾有事になれば日本は参戦を余儀なくされるリスクに直面している状況下、日本政府は米国と常に同一歩調で中国に対する強硬姿勢を執り続けているが、それで日本は大丈夫なのかと指摘された。
〇米国の中国専門家も欧州の専門家の見方に賛同するとともに、日本政府は米国に対して台湾をめぐる行動を慎むべきであるときちんと伝えるべきであると語った。
〇米国は軍事的なインセンティブを背景に台湾問題によって中国を挑発しているが、これは東アジアの平和維持にとって好ましいことではない。日本は米中対立の鎮静化を働きかけ、台湾有事のリスクを軽減すべきである。日本は仏独と連携し、アジア・EU諸国を巻き込み、一致団結して米中両国に働きかけることが望ましい。