メディア掲載 エネルギー・環境 2022.10.14
Japan In-depthに掲載(2022年9月23日)
【まとめ】
思わずハタと膝を打った。これは妙案だ。
「既存の石炭火力発電所が退役したら、原子力発電でリプレースしてゆく」というもの。
ただこれだけなのだが、実にうまいアイデアなのだ。というのは、以下の4つの問題を、一挙に解決できるからだ。
以下、米国エネルギー省(DOE)が9月14日に発表した報告書を紹介しよう。
この報告書では、3つの質問に焦点を当てている。
以下は、それぞれの質問に対する同報告書の結論だ。
この報告書を受けて、ロジャー・ピールキー・ジュニアは、かりに前述の候補地すべてが原子力に転換されるならば、3,400テラワット時以上の電力を供給できると試算している。これは、2021年の米国全体の発電量の約70%に相当する。これが完全に実現することはまずないが、いずれにせよ、機会の規模は大きい。
この「石炭から原子力へ(C2N)」は単なる理論上のアイデアではなく、すでに革新型原子炉を用いた計画が発表されている。今後の有力な選択肢であることが、事例を以て示されているということだ:
上述の報告書は米国についてだけのものだが、世界的には、より大きな機会がある。石炭火力発電大国といえば、中国、インド、ロシアなどだが、これらの国でも「C2N」が実現してゆけば、案外と急速にCO2が減ってゆくかもしれない。
米国エネルギー省での評価では、既存の大型軽水炉だけでなく、より規模の小さい革新型原子炉がさまざまに開発されてきたことで、C2Nの機会が大きく膨らんでいるようだ。
日本でもC2Nは有望かもしれない。既存の火力発電所を、原子力発電所でリプレースするのだ。地震や津波などの災害があるので日本での敷居は高くはなるが、外部電源を必要としないパッシブ冷却技術などによって安全性を高めた革新型原子炉が、この担い手になるかもしれない。メーカー、電気事業者、規制当局、政治の創造性に期待したい。
そしてその先には、核融合炉の立地地点としても、火力発電所のリプレースを進めればよいのではないか。このメリットは革新型原子炉によるリプレースとまったく同じことだ。
核融合というと夢物語のように思われがちだが、じつはもう手の届く所にある。要素となる技術はすでに出来ていて、あとは実証を積み重ねれば実現できる。革新型原子炉はよきライバルだが、それを上回る経済性、安全性を達成し、無尽蔵のエネルギー源になる。核融合炉で世界中の火力発電所をリプレースしてゆけば、地球温暖化問題もエネルギー問題も解決してしまう。