メディア掲載  エネルギー・環境  2022.10.05

原子力発電所の再稼働と新増設を急げ 火力発電の燃料費高騰、エネルギー不足は国民の生命や財産に直結 問われる岸田政権の手腕

夕刊フジ(2022年9月17日)に掲載

エネルギー・環境

岸田文雄首相が824日、「原子力発電所の再稼働」「革新炉の研究開発、そして新増設」に言及した。この言やよし。日本にとって必要なことだ。

原子力発電所の燃料費はわずかであり、1キロワットアワーあたりで17円にすぎない。いま、天然ガス火力発電は1キロワットアワーあたりの燃料費は16円程度にまで高騰している。

原子力の再稼働を進めることによって、電力コストを年間約2兆円下げることができる。

原子力の現状は、稼働中が7基であり、岸田首相は年末までに10基を、さらに来夏以降には7基を再稼働するとした。これに加えて、あと16基が再稼働を目指している。都合33基すべての再稼働を速やかに進めるべきだ。

日本の安全保障状況も緊迫している。8月には中国が台湾を取り囲むようにして大規模な軍事演習を行った。台湾が海上封鎖される可能性が現実味を帯びてきた。

日本にとっても他人事ではない。中国の海軍力は年々増強されており、重大な脅威となっている。中東においても紛争の火種は尽きることがない。日本への石油やガスの輸出が妨害されると、日本はエネルギー不足に陥る。

日本は天然ガスを液化して輸入しているが、これは気化しやすいので備蓄に適さず、国内には2週間程度分の在庫があるだけだ。石油は200日分の備蓄があるが、自動車や工場などで主に使うものであり、発電は主要な用途ではない。石炭は発電所にいくらか蓄えがある程度だ。

エネルギー不足は、国民の生命や財産に直結し、工業国・日本の産業を破壊しかねない。

原子力であれば、一度燃料が装荷されれば、1年以上にわたって発電を続けることができる。日本へのエネルギー供給が途絶した場合、原子力発電所が果たす役割は極めて大きい。

いまの原子力を取り巻く政策、制度、規制は抜本的に見直さねばならない。

安全規制は合理化が必要だ。米国原子力規制委員会(NRC)には「善い規制の原則」がある。そこでは安全を確保するだけでなく、電気の安定・安価な供給をもたらすような、合理的な規制であることが求められている。ところが、日本にはこの「善い規制の原則」がない。

原子力規制委員会ができた当時、菅直人首相は「原子力発電所を動かせない仕組みをつくった」と言った。これはまさにその通りになり、多くは停止したままで、震災後10年もたったが再稼働は遅々として進んでいない。かかる制度は抜本的に見なおし、「善い規制」を実現すべきだ。

これからの「黄金の3年間」は国政選挙の心配をすることなく政権運営ができる。原子力再興に向けて岸田政権の覚悟と手腕が問われる。